第55話 電子レンジ

文字数 843文字

 朝の始まりは、1杯の白湯から。そう、私のルーティンです。

 もっと正確に言えば、起き抜けに歯を磨いてから、白湯を飲む。お口の中は寝ている間に細菌がウヨウヨ。その話を知ってからずっと続けている。若いときからやっていれば、今よりもっと健康だったに違いない。だから私は子供たちにアドバイス。夫は、いつの間にかやっていた。まあ、いい、知られたところで減るもんじゃ無し。むしろ、私より長生きしてもらわねば。死後の残務処理は面倒だからね。

 おっと。違う違う。今日の話はコレじゃない。白湯を作ろうとマグカップいっぱいに水を入れ電子レンジへ。すると……電子音と共に液晶画面に異常表示が。急いで取説を見る。余談だが、取説はキッチンに置いてある。機能が多すぎて、たまに手の込んだ料理をしたいときに重宝するから。表示された文字は明らかにいつもと違う感じで訴えていた。『H97』文字によっては、こちらの誤操作で『仕切り直せば使えますよ〜』的なアルファベットが頭に付く。例えば『U14』とか。たぶんHELPとUSE。

 今から思えば少し前から使った後に、変な唸り

がした。多少の経年変化は仕方ないと思っていた。18年も働いてくれた代物。人間で言うところの老衰か。そうあってくれた方が納得がいく。

 物に心を持たせ、擬人化するのは日本人だけだと以前ラジオで聴いたことがある。使い慣れた物は愛着もあり、ペットのようだ。たかが電子レンジ、されど電子レンジ。子供たちが居たころは、いろいろな料理に使った。でも、なぜか1番思い出されるのは焼き芋。オーブン用の天板を置いて、太めのサツマイモを中央にデンと置く。1時間ほどかかった。中まで焼けているかを長い竹串でひと刺し。スーっと抜いた小さな穴から湯気がホワ〜ッと出る様子は、それだけで美味しいと分かるほど。数日前に作ったクラムチャウダーにパイ生地を被せたポットパイが最後の料理になった。

 長い間、お疲れさま。いろいろな料理をありがとう。

 さて、新しいレンジ、どれにしようかな〜。
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