第24話 ポンコツな1日

文字数 898文字

 昨日は焦りました。なんか1日中バタバタしました。慌てすぎて、一瞬何が何だか分からなくなりました。アラ還の皆さま、そんな日はありませんか?

 バタバタは、予定していた道を通り過ぎたことから始まった。実家の地元道は潰しが利くので、多少間違えても大丈夫なはずだが、この日に限っては大幅な通り越しでリルートを迷った。結局時間はかかるが、Uターンして予定していた道へ。

 何とかナビが示す場所に着いた。だが、そこは私が行きたかった所ではない。おかしい。ナビで住所を入れたのに、それらしい街並みではない。車のナビは古い。そのせいか?

『ココは何処?』

目的地で合流するはずの叔母に連絡。叔母は運転の出来ない人。

「T池が見えたら手前を右へ行って」

私がどの方角に居るか関係なしの指示。熱心に説明してくれるので、頷きながら電話を切ったが……???

ふーっと深呼吸。

 あ、スマホのナビでいいじゃん。なぜ、初めからそうしなかったのか。とりあえず無事に叔母と合流。その後、叔母宅でひと息つこうとソファーに腰掛け、左手の小指を見た。

『えーー。無い』

 そのときの私の表情は鏡を見なくても分かる。絶対、蒼白だったはずだ。無くなったのはダイヤの指輪。エンゲージリング。薬指にはまらなくなったので、緩いが小指にしていた。それが災いして、何処かで落としたようだ。叔母に気付かれないように、車へ戻り運転席のマットを外した。無い……叔母宅に着いたばかりなのに「指輪が無い〜」なんて言えない。

 頭の中は何処で落としたのかと記憶捜索が始まっていたが、表向きの会話は久しぶりの再会を喜ぶセリフが並んだ。トホホホホ……

 いつしか頭の中は、指輪の捜索から決別へ。仕方ない。運命だったんだ。そんな言葉が叔父とゴルフ談義をしている頭の中でグルグルしていた。何なんだ、今日のコレは。

 3時間ほど滞在して、実家への帰路につく。頭の中は指輪の思い出でいっぱいになった。帰り道はロボットのように腕と足が運転してくれた感覚。気落ちして実家にたどり着くと父が

「指輪、落ちとったぞ」


 このときほど、私は父母への態度を悔い改めたことはありませんでした。まさに地獄からの天国。
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