第9話 コミニュケーションの形

文字数 890文字

 私はゲームアプリをほとんどやったことがありませんが、いろいろなアプリで楽しんでいます。最近取得したのが、飛行機の軌跡を追う『フライトレーダーライト』です。

 昨日の午後、下の子からLINEがきた。文字じゃなくて、写真で。飛行機が写っていた。

《羽田?どっか行くの?出張?》

〈そう。今から高松〉

 旅好きの私。飛行機ももちろん大好きだ。下の子はわりと出張が多い仕事。飛行機で移動するときは出張先で1泊、新幹線のときはほとんど日帰りだそうだ。仕事とは言え、羨ましい限り。そこで少し前に取った『フライトレーダーライト』の出番となった。出発時刻と便名を訊く。

 アプリを立ち上げると、地図上に飛行機がウヨウヨ動く画面が出る。我が家の上空近くをJALの福岡便が飛んでいた。少し地図をズラして見ると日本海に向かうルフトハンザ機もあった。今の時期数少ない国際線だと、しばし感慨にふける。予想以上に国内線の便数は多かった。羽田辺りの地図を拡大してスタンバイ。羽田には飛行機のイラストがいくつも重なってジリジリしていた。

 出発時刻を過ぎても、下の子飛行機は羽田から抜け出さない。10分ほど待ったが痺れを切らして、しばらく席を外した(主婦だからやることは、いつでも幾つでもあるからね)炊飯器に夕食用のご飯をセットして再び画面を見たら……ジリジリと下の子が乗ったJALが富士山方向を飛んでいた。ほどなくLINE。

〈今日は雲が多いわ。富士山見えん〉

と眼下の雲だらけの写真。羽田から高松までは、およそ1時間ほど。画面上の飛行機はジリジリだが確実に動いているのが分かる。もう少しで琵琶湖に差し掛かろうというときに

《あと少しで、琵琶湖だよ》

と送った。またもや雲だらけの写真が送られてきた。

 時間通りに高松に到着。地図上の飛行機も羽田の混雑具合と違い、1機のみで誇らしい感じ。県外で遠く離れて働く下の子は出張の移動時間にときどきこうやって私の相手をしてくれる。産んで良かったなと思う瞬間でもある。

 どんな形であれ、大人になった我が子たちとのコミニュケーションは、私にとって何よりも変え難い至福のひとときになっています。
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