第58話 咳払い

文字数 848文字

 コロナ禍になってから、コロナに感染しないようにと言うより、発熱してはいけないっていう思いの方が強くないですか?

 朝、目覚めたとき必ず確認するのが、喉の調子。私は若いときから喉が弱く、炎症を起こしては高熱を出した。多分理由の大半は口を開けて寝ているからだと思う。だから寝る前に口が開かないように、テープで固定していた時期もある。その甲斐あってか、最近はテープ無しでも鼻呼吸できているようだ。だが、喉の痛みを少しでも感じたときは、喉飴と葛根湯で徹底ケア。今日まで事なきを得ている。

 とは言え、喉が痛くなくても何かの拍子で咳払いをすることがある。シニアの特徴のような気がして少し萎えるが…… 今朝も喉がスッキリせず『エヘンエヘン』とやった。すると……

ギロリ‼︎

 夫の視線が痛い。私の咳払いは何の意味もない自然現象だ。だが、夫には私が胡散臭く思っているように聞こえたか?

 夫の行動には少々訳がある。夫の実家では咳払いは、義母の抵抗のサイン。義父はとにかく浮世離れしたやんちゃな人だった。夫は完全に義母の遺伝子が強いと思われる。義父はポリシーがあったのか、性格なのかは今となっては知る由もないが、よくやってはいけないことを平気でやってしまう人だった。義母は大地主のお嬢さま。声を荒げるなんて無粋なことはしない。義父が余計なことを言いはじめると、咳払いで遮っていた。だから夫の脳には、咳払いが意味のある行為だとの刷り込みがある。

 私があまりにもエヘン虫と戦っていると、心配するどころか

うるさい‼︎』

との視線が飛ぶ。自分だっていつも咳払いのひとつやふたつあるのに…… 棚に上げると言うのはこういうときのためにある。人に厳しく、自分に甘く。この部分は義父の遺伝子を強く感じることしきりだ。

 最近、あまりにも寒くてウォーキングをしていません。だから筋肉量が落ちているのか、平熱が下がり気味、35.4℃。外出先で、熱が低く表示されることは喜ばしいんですが、免疫力や抵抗力が落ちているのではないかと思うと複雑です。
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