第35章・問いかけ

文字数 15,614文字

 翌日、アスヴァルドは変わらぬ様子でエリスの前に現れた。
「ソルハル殿は、お帰りになったそうですね」
 エリスは訊ねた。
「そうですね」
 簡潔な答えが返ってきた。アスヴァルドは、それ以上は何も言いそうになかったので、エリスは再び問うた。
「何か、おっしゃっておられましたか」
 アスヴァルドは小さく肩を竦めた。
「貴女を非難しておられましたが」
 大した事ではないと言いたげな素振りであった。
「どのように」
 少し、躊躇う間があった。
「――貴女が、とんでもない野蛮人だと」
「それでも、まだ、わたしに求婚なさるおつもりですか」
「あの者の言う事など、気にはいたしませんよ」穏やかにアスヴァルドは言った。「例えそうであったとしても、私は気持ちを変える気はありません」
「なぜ」
「それを、貴女が問われるのですか」アスヴァルドは苦笑を浮かべた。「私は、貴女を見ていない訳ではありませんよ。今の貴女が、本来の貴女ではない事くらいは、分かります」
 エリスはアスヴァルドをまじまじと見つめた。背の高さは標準であろうこの男は、共に父よりも淡い色の目と髪をしていた。本来ならば冷たく感じる目の色なのに、顔は柔和に見えた。ヴァドルのような人物なのか、という印象は変わらない。
「私は、貴女が何者であろうと、こうして参りましたでしょう」
 それは、戦士階級や自由民という事であって、決して奴隷の事を示しているのではない。そのくらいは理解していた。奴隷の子は奴隷だ。サムルのように嫡子と認められる事の方が珍しい。アスヴァルドは、族長白鷹ロルフの正式な結婚によって産まれた娘であるならば、母親がどうあろうと気にはしないと言うのか。
「心が広くていらっしゃるのですね」
「私の心が広ければ、ソルハル殿が脱落した事を密かに喜ぶものではありませんよ」
 男は少し、笑った。「競争相手が減るのは願ってもない事ですから。他の者より年上であれば、不利ですので」
「あなたは、わたしに何をお望みなのですか」
「私と家族に誠実である事の他には、何も。貴女には貴女の秘密があるように、私にも私の秘密があります。そこに踏み入らずにいれば、互いに満足できる生活を送れるのではないかと思いますが」
 この人は大人だ、とエリスは思った。必要以上に他人の事に首を突っ込まない。互いに、秘密を有しているならば、それを尊重しようと言うのだ。アスヴァルドの秘密がどのようなものであるのかは謎であったが、知る必要もない。騙されたければ、いつまでも騙される事を望むのか。
 少なくとも、アスヴァルドはそのようであった。
 エリスは、これは少し考えなくてはならない、と思った。自分の内心の自由は、この男は保証してくれた。それは、大きい。普通は夫は妻の秘密を許さぬものであろう。恐らく、この男を選べば穏やかな人生を送れるに違いない。だが、どこか壁のあるような生活に、自分は耐えられるだろうか。アスヴァルドを、愛する事ができるだろうか。
「貴女が、どなたを選ばれましょうと、私は貴女の幸福を願います」
 自分は、もはやこの競争からは外れたかのような言い方であった。
「あなたは、諦めていらっしゃるのですか」
「私は自分の事を知っておりますよ。この年齢まで独り身なのですから、女性の(ほう)からどのように思われているのかも。貴女はお若いのですから、私のような男は齢を取りすぎているように思える事も」
 アスヴァルドは微笑んだ。
「ずいぶんと、ご自分を卑下なさるのですね」
「卑下、ではありません」
「では、なぜ、わたしに求婚しにいらっしゃったのですか」
「宴で貴女のお姿を拝見して、思ったのです」アスヴァルドが言った。「何と、生き生きとした美しい人なのだろうか、と。貴女のような人が傍にいる人生を、子を得、育む人生を考えずにはいられませんでした。私のような男であっても、そのくらい夢を見る事は許されましょう」
 アスヴァルドは首を振った。「貴女に私は相応しくない。お会いして、それが分かりました。私は貴女に穏やかな生活はお約束できます。しかし、貴女にはそれでは退屈すぎると存じますが」
「どうして、そう思われるのですか」
「貴女は、眩しいくらい生気に満ちていらっしゃる。貴女の人生は始まったばかりです。それを謳歌させる事が、私に可能だとは思えません。私を惹きつけるその活力を輝かせる術を、私は知りません」
「では、辞退なさるのでしょうか」
「いいえ」アスヴァルドは破顔した。「万に一つの望みがあるのでしたら、私はそれに縋りましょう。白鷹殿のお目に適うようにと、島の若い者達を蹴散らして来たのです。選ばれましたら、貴女の望む人生ではないかもしれませんが、少なくとも、不幸であったと嘆くものには致さぬ所存です」
 それが、私の愛ですよ。
 そう、アスヴァルドは言うようであった。
 これが、大人であるという事なのだろうか。エリスは不思議に思った。積極的に自分を売り込もうとはしない。その穏やかな表情と言葉からは誠実さが感じられた。この男と一緒になればどのような人生になるか、容易に見通す事ができた。子供がいて家の中が大騒ぎになろうとも、この男ならば、ただ静かに微笑み、その様子を見て楽しむのだろう。
 それは、悪い人生ではない。
 しかも、この男はエリスがどのような人間であるかも知り、それを認めてくれている。自分が議論をふっかけても、穏やかに微笑み、いなし、決して言下に否定したり論争をしようとはしないだろう。その事は物足りない。しかし、一人の人間に全てを望むのは欲が深すぎるというものだ。
「あなたは他のお二人を、どのように評されますか」
 意地の悪い質問だった。オルトが眉をひそめるのが見えた。
「私にお訊きになりますか」アスヴァルドは、しかし、少し笑っただけだった。「ここで自分の競争相手を悪く言えば、得るものはありますまい。しかし、良く言うのも癪ではありますな」
「わたしは、あなたがたのことを何一つ、知らないのですから、他の方の評判もお聞きしたいのです」
 アスヴァルドは顎に手を当てて少し考えるようであった。
「ケネヴ殿は、貴女がご覧になったままのお人で間違ってはいないと思います。嫌われる人ではありませんよ。女性に対しては世慣れぬところも多いですが、裏表のない人だと保証できます。さて――」アスヴァルドは首を傾げた。「サムル殿に関しては、評判は、悪くはありません。生まれをどうこう言う者もありますが、私の印象では、それ程目立つ(ほう)ではなくとも、実力はある人です。いずれは戦士長とおなりでも、私は不思議に思いません」
「わたしは、あなたのことも他の方にお訊きいたしますが」
「そうでしょうね」
 愕いた様子もなく、アスヴァルドは笑んだ。
 どこまでも、落ち着いた大人であった。自分とは好対照であろう。
 この人を好きになる事ができれば、どれほど良いだろうかとエリスは思った。じっくりと時間をかければ、この人の考えや人となりを良く知ることができただろう。求婚者である、という一事だけで、つれなくするには勿体ない人であった。だからと言って、この人を選ぶものではない。
 時間が、足りなかった。このような人を一生の伴侶として生きていけるのかどうかを問うには、残された時間は余りにも少なかった。

    ※    ※    ※

 エリスが反抗するかもしれない、という予感は、ロルフにはあった。
 しかし、あれほどまでに抵抗するとは思わなかった。
 いつもは最終的には、肯首させる事が出来ていた。それが、今回は反論に終始した。
 独立心の強い娘である事は分かっていた。頼もしく思いもした。それが、甘かったのか。人柄も経歴も、白鷹の娘には相応しい者達であったのに、エリスはそれを認めようとはしない。そこまで頑固な娘だとは思わなかった、というのが正直なところであった。これは。明らかに自分の血だ。
 家長という存在が、どういうものかを知らぬ娘ではない。権限を侮る娘ではない。自身の選択の方が父親よりも優れていると、思い上がるような娘ではない。
 それでも反抗を続けたのは、結婚が嫌であったのか。まだ、精神(こころ)は子供であったのか。いずれにしても、この娘が納得の上で婚約を、結婚を決めねばならなかった。
 エリスの意向を聞こうなど、我ながら馬鹿な決断をしたものだ、とロルフは自嘲した。娘は、子は、父親に従っておけば良かった。男子は、正戦士として自立すれば、意見を言うのは自由だ。だが、娘は違う。そして、結婚に関しては、男子であろうと父親の決めた縁談には従うものだ。
 ――もし、あの子が先の奥方様の子であれば、あなたは、同じようになさいましたか。
 ――愛を知らぬ、あなたではないはずです。
 その言葉は、ロルフの胸を抉った。あの女が、エリシフの事を口にしたのは許せなかった。エリシフは、ロルフの心の中で最も神聖な場所であった。そこに、あの女は、汚れた足で踏み込んだのだ。決して、許す事は出来なかった。許すつもりもなかった。
 愛したのはエリシフだけだった。女として、妻として、ただ一人の存在であった。
 そのエリシフの子供達は、中つ海の者が奪った。
 エリタスとヴェリフならば、自分に逆らう事などなかったはずだ。二人とも、言いつけを良く守る子であった。それに、男子だ。存命であれば、もう結婚し、子も生まれているかもしれない年齢であった。その妻はロルフがしかるべき者を慎重に選んだであろうし、二人もそれに従ったであろう。求婚したい娘がいたのならば、ロルフがその人となりを見定めた上で決定したであろう。
 エリスは、違う。娘だ。例えエリシフの娘であったとしても、父親には従うものだ。嫌だと言えば、考えぬでもない。だが、判断を下すのはやはり、ロルフであったはずだ。
 それは、結局は空事でしかなかった。子供達は育たなかったのだし、エリシフとの間に娘はいなかった。全ては、想像の裡を出ない。
 自分は、エリシフと出会って幸運であった。心から信頼し、愛せる女と相愛で、運が良かった。
 互いに六歳の夏、父に連れられてこの集落にやって来たエリシフ。淡い色の金髪をお下げにし、灰色の目には強い光があった。
 ――お前の婚約者だ。
 父はそう告げた。突然の事に、父と少女を代わるがわる見つめる他なかった。何らかの事情があって疎遠になっていた父の友人の娘なのだと、他の大人から教わった。両親を共に亡くし、係累もなかった為に、ロルフの父が引き取ったという話であった。
 エリシフは、父親の友人であったという見も知らぬ男に連れられて来た初めての集落でも、落ち着き、背筋を伸ばしていた。その凛とした佇まいに目を引かれた。綺麗な子だ、と思った。そして、儚げな外見には似合わぬ力ある目に、惹きつけられた。
 ヴァドルとオルトもその場にいた。オルトは父の手からエリシフを受け取り、館に案内した。その後にヴァドルと二人ついて歩いていると、時折、少女は自分を振り向いた。
 自分達は、将来は結婚するのだ。そう思うと、不思議な気持ちになった。だが、嫌ではなかった。エリシフの美しさと強さは幼いロルフの胸を打った。
 それからは、常に三人でいた。女子であるエリシフは当然、学び舎には通わなかったが、その時間にはオルトに付いて家政や女として必要な手業(てわざ)を学んだようだった。遊ぶ時にはロルフとヴァドルが木剣を振るったりしている間、傍でじっと見ているだけだった。どちらの応援をするでもなかったが、ロルフはエリシフの視線を感じた。
 一緒になるべく育てられたが、そうでなくとも、互いに惹かれ合っただろう。
 両親を亡くした哀しみをエリシフは決して、見せなかった。強い少女であった。ロルフやヴァドルが間違っている時には堂々とそう言い、怖気付く事もなかった。身体はさほど丈夫な方ではなかったが、精神は強靭であった。
 エリスは、エリシフを思い出させた。
 顔かたちが似ている訳ではない。エリシフは確かに、強かった。だが、それは、人前では決して見せなかった。大人達の言葉には従い、礼も尽くした。エリスはその辺りの使い分けが出来てはいない。それは、短気で怒りっぽいロルフの娘なのだから仕方のない事なのかもしれない。
 厄介な事だ、とロルフは思った。読み書きを知っているというだけでも、普通の男の目には生意気に見えるだろう。不遇な産まれに加えて、女らしくはない、というのは、いかに白鷹の娘で目を見張るような美人であったとしても、不利だ。
 求婚者達も、恐らく、ソルハルの捨て台詞を知っていても猶、今日は来たのであろう。それは、例え中つ海の血を引く娘であったとしても、エリスを自分の妻として、子の母として欲しているという事だ。断られてそれぞれの島へ帰ったとしても、エリスの素性を殊更に吹聴して回るような愚かな真似はすまいと思われた。
 選ばれた男は、白鷹ロルフの後ろ盾を得たという証になる。
 アスヴァルドは族長の次男であり、いずれは後を継ぐ兄の補佐役になる為に、そういったものは必要とはしていないであろう。年齢は高いが、その分、部族内での地位も築いているし、充分な財産もある。エリスに不自由はさせまい。
 だが、末の息子であるケネヴや母親が奴隷であるサムルには重大な問題だ。ケネヴはまだ、戦士として名がある分だけ有利であろうが、少し単純なところが引っかかった。賭け事や酒量が度を過ぎてはいないか、喧嘩早くはないかを知る必要があった。取り敢えずは、エリスが忍耐力を試したとて、惚れた女に対して腹を立てるような男ではないようだ。
 サムルは、問題外だ。なぜ、緑目がこの若者を推挙したのか、ロルフには理解できなかった。下手をすれば、侮辱とも取られかねない選択であった。当然、緑目にそのような心のない事は承知していた。弟の息子だからだろうか、とも思った。嫡子であると実弟が認知した一人息子であれば、支持もするのかもしれない。それとも、信頼の表れか。そのような者が、何故(なにゆえ)に推薦人を集められなかったのか。気になるところであった。
 もし、族長の信任が厚いのであれば、充分にエリスの夫としての資格がある。その辺りの事は、随伴の推薦人の言葉ではなく、船に乗り組んだ他の者に訊く方がよかろう。
 それはヴァドルが既に行っているだろう、とロルフは思った。エリスに相応しい男かどうかを、初日から調べているはずだ。ソルハルに関しては間に合わなかったのが悔やまれたが、ヴァドルとて万能ではない。
 随伴人は、良いところしか語らない。詩人(バルド)は更にそうだ。ウーリックの言葉を信じぬ訳ではなかったが、サムルのような男には用心に越した事はない。年齢と産まれの割に落ち着き、冷静に言葉を選ぶ。しっかりとした教育を受けている事も見て取れる。だが、正体が良く分からない。
 そういう意味で言うならば、エリスの将来を思えば、アスヴァルドが最も有利だった。部族内での将来の位置、人柄、財産、そういった点で、他の二人よりも頭一つ分、抜け出していると言ってもよいだろう。
 後は、エリスがどの男を選ぶかだ。

    ※    ※    ※

 改めて、自分は一人なのだとティナは感じた。
 オルトはエリスの付添人として、その求婚者達と会う事が出来た。だが、ティナは一人で部屋に閉じこもっていなければならなかった。本来ならば、母親である自分にもエリスの傍にいて求婚者達を見定める機会が与えられても良いはずであった。それを許されないというのは、やはり、ロルフの心の中では、自分は妻でも子供達の母親でもない事を示しているような気がした。
 北海に来て、どのくらいの年月(としつき)が過ぎたであろうか。
 その年月と同じ数だけ、ロルフの妻でいる。
 エリスは十七だ。北海に来た翌年(よくとし)に産まれた。
 もう、自分は、故郷で過ごしたよりも長く、この地にあるのだとティナは思った。それでも、自分は異邦人であり続けている。馴染めない事が多かったし、人は、ティナが中つ海の者である事を忘れてはくれない。
 エリスの求婚者にしたところで、そうだ。
 オルトから、ソルハルという男の振る舞いと言葉を聞き出した。エリスの語らなかったあれこれを、それで知った。
 エリスは、自分が中つ海の血を引く事を知っていた。
 ティナは愕かずにはいられなかった。そのような事は一言も話した憶えがなかったのに、エリスは自分で考えてその結論に至ったというのか。その聡さはロルフのものだ。そして、女に求められているものではない。ロルフの不興を買うものでなければ良いと、願わずにはいられなかった。
 自分の娘でありながら、エリスの事を全て理解できている訳ではなかった。エリスは北海の人間として育ち、価値観も慣習もティナとは異なっていた。それでも、娘は娘であった。
 昨夜、ロルフが族長室に戻るまで着替えずに待っていた。いつものように、ロルフはティナに一瞥もくれなかったが、エリスの意向を聞いてくれた事に対して、一礼をした。無視はしようとも、その視界に入っているのは分かっていた。無言でロルフは寝支度をしたが、ティナは、ロルフが寝床に入るまで、頭を下げ続けた。
 それは、屈辱ではなかった。
 心から、ロルフには感謝をしていた。
 エリスに、将来の選択を与えてくれた事に対して、言い尽くせぬ思いを抱いた。
 この男は、ティナの事はどうあれ、エリスを本当に愛している。そうでなければ、絶対的な家長であったロルフが譲歩するとは思えなかった。前の奥方の事を持ち出し、愛情に訴えたのは、間違いではなかったのだ。その事で、ロルフが一生、ティナを許さなくとも、その甲斐はあったのだ。
 たかだか三人、とエリスは言ったが、それでも、ロルフはエリスの意に沿いたいと思ったのだから、エリスも感謝するべきだった。ここでロルフの機嫌を損ねてしまえば、取り上げられても文句は言えない立場であると知るべきであった。
 立場をわきまえろ、と言えば、エリスは反発するだろう。傲慢からではない。エリスの自由を欲する心が、縛り付けられるのを嫌うからだ。こればかりは、どうする事も出来なかった。エリスの美の半分は、その生き生きとした魂の輝きなのだ。誰もが魅かれ、愛するであろうその部分を、奪ったり殺したりできるはずがなかった。
 ロルフの機嫌を取れ、と言うのではない。それでも、自分に与えられた機会を最大限に活かす事を考えても良い年頃だった。真っ直ぐなのは、悪い事ではない。だが、どこまでも自分の心に正直に生きる事ができないのも、真実だ。
 ティナは、自らに対して正直に生きようとする娘が眩しかった。それを活かしてやりたいと思えども、ティナには何の権限もなかった。ただ、女であるというだけではなく、北海では他所者でもあった。
 どこまでも他所者として過ごさねばならない身の上を、嘆いても何も始まらない。
 エリスが、自分がロルフに進言した事を知らなくても良かった。ただ、その人生の幕を、苦しみと哀しみ、恨みで開けて欲しくはなかった。自分のように、閉ざされた世界で過ごして欲しくはなかった。
 罵られようが、殴られようが、エリスの人生を不幸にするよりは良かった。
 ティナは十七で夢に見た将来を壊された。同じ年齢で、娘に同じ事が起こって良いはずがなかった。
 好きでもない男との結婚が、如何なるものかを知る自分と同じ道を辿って欲しくはなかった。
 いや、エリスならば、それを我慢する事はないのかもしれない。北海の男達がロルフのように枕頭や枕の下に刃を忍ばせて眠るのならば、新床(にいどこ)でその男の生命をエリスは取ってしまうだろう。そうなれば、殺人の罪でエリスは裁かれねばならない。この島で起こった事ならばロルフが処置をしようが、他の島に渡ってしまえば、いかに族長とは言え、ロルフの力がどれほど及ぶのか、ティナには分からなかった。殺人は、恐らく死罪。ロルフの娘である事を考慮されても、生涯、幽閉されればましな方なのかもしれない。この北海の法を知らぬ身を、これほど恨めしく思った事はなかった。
 婚礼の夜の事を思えば、屈辱と恐怖で震えるよりも、エリスならば男を殺す方を選ぶだろう。その事に気付かぬロルフではないと思いたかった。だが、所詮は男である。女が、どのような気持ちでいるかなど、考えてもみないのかもしれない。
 自らの、ロルフと重ねた夜を思い出し、ティナはぞっとした。
 唯々、早く終わる事を願い、神への祈りを心の中で唱え続ける他は術がなかった。抵抗すれば平手が飛んでくる事は分かっていたし、力ではロルフに適わない。ロルフが寝入った後で、一人、心と身体の痛みに涙するしかなかった。ハラルドが産まれてからは、子を産む事ができなくなった為に没交渉で、どれだけ安堵しただろうか。
 男は、このような惨めな思いをする事はないであろう。
 しかし、自分の男の子達は、いずれロルフのような立場になるのかもしれない。
 それは、耐えられないと思った。ロロが、オラヴが、アズルが、そして、小さなハラルドまでが、自分の妻を暴力で屈服させるようになるのかもしれない、という未来は、想像したくもなかった。北海の男として育った子達は、騎士とは違う。それを当然の事として為すのだろうか。
 女に生まれたが為に、耐えねばならない事は多かった。もし、男であったならば、あの城砦での瞬間にも、何か良い手立てを思い付いたのかもしれない。ロルフと剣を交えていたのかもしれない。それとも、妹がロルフに連れて行かれるのを、なす術もなく見送るだけであっただろうか。
 思いを巡らせたところで、過去は変えられない。
 せめて、エリスの未来を明るいものに変える事ができれば、と願わずにはいられなかった。

    ※    ※    ※

「エリス殿、大丈夫でいらっしゃいましたか」
 小走りでやって来るなり、ケネヴはエリスにそう言った。
「ソルハル殿の事は聞きました。ご無事であって、何よりです」
 エリスは赤毛の男に、にっこりと笑った。大きな声と仕種は苦手であったが、根は悪い人ではないのが厄介だと思った。
「ソルハル殿は、何か、おっしゃいましたか」
「まあ、貴女の事を色々と。しかし、無礼を働いた男の申す事、気になさる必要はないかと存じます。貴女は白鷹殿の娘御でいらっしゃる。その事を覆せる者はおりません」
 この男も、既にエリスの素性を知っているのだ。知って猶、求婚を続けると言うのか。辞退をされても選択肢が減るだけであったが、いっその事、全員がいなくなれば良いのに、と思わずにはいられなかった。
 この夏の間に、エリスの素性や性格は北海中に知れ渡るであろう。それでも求婚をしようという奇特な者がいるとは思えなかった。いつ寝首を掻くか分からぬような妻を娶るような男がいるだろうか。
 この機を逃せば恐らく、自分を妻にと考えるのは、碌な男ではないだろう。断られれば、この三人は大人しく引き下がるかもしれない。父が言うように、誰も来なくなって後悔する事になるのだろうか。
 自分は、後悔はしない。
 そう思った。自分が選ばなければ、父が選ぶだろう。それを拒否するだけの強さが、自分にはあるだろうか。
「あなたは、求婚を止めようとは思われなかったのですか」
 この男には直截に言った方が良いだろうと思った。
「何を仰言います。(それがし)は、そのような軽い心で来たのではありません」
 ケネヴは急き込んで答えた。「某に権力はありません。しかし、貴女を守るだけの力はあると自負しております」
 腕力で、蔑む者を黙らせようと言うのだ。力は北海の男のもう一つの法でもあった。その点ではケネヴの実力は疑いようもないだろう。だが、この男の心が移ろわないと、断言できるものなのだろうか。熱しやすい者は、冷めやすい。父が母を娶った時には、熱情があったであろうが、今ではそれは完全に冷めてしまっている。それが、自分の身の上に起らぬとは断言できない。
「あなたは、なぜ、わたしを妻にとお望みなのですか」
「某は――」ケネヴの顔は髪のように赤くなった。「某は、貴女の事が好きです。女人(にょにん)にそのように思うのも、言うのも初めてです。これからも、そうだと思っております」
「あなたのような戦士であれば、他にもお話はありましょうに」
「族長家の四男に、ですか」口元を歪めてケネヴは自嘲するように言った。「長男次男の他は独り身で過ごす者が多いのは、ご存知でありましょう。確かに、某はこの年齢にしては財を築いた方だと思います。しかし、それを目当てにしての婚姻は、望むものではございません」
 三男以下が独身が多い、というのも真実だ。男に較べて女の数が少ないという理由もあるだろうが、それでも、この男は財産と言う武器を持っており、選べる立場にあるのだ。
 財産目当ての女はいらない、と言うのならば、それなりの持参財を有しており、夫の財を必要とはしないエリスは良い相手だ。
「浮沈の多い戦士である事を不安に思われるのであれば、貴女の生活が困らぬように、農場を買うのも考えております」
 五十歳まで戦士でいられるとは言っても、そこまで続けられるのは族長や戦士長などの特別な者だけだ。大概の戦士は、それまでに戦いに生命を落とすか、引退をして農場や集落に引っ込むかだ。家族が安定した生活を営めるように将来を考えているのは、良い事であった。それが、誰かの入れ知恵であったとしても、そういう人物が傍におり、進言を受け入れるというのは悪い事ではない。
「あなたは、戦士であることをお望みなのですか」
「唯論、男と産まれたからには、北海の戦士として生きる事を選びます」胸を張ってケネヴは言った。「例え、戦で死のうとも、貴女に恥はかかせません。某は、貴女の誇りでありたいと思っております」
「わたしは、死に(はや)る人を夫に持つつもりはありません」
「死に逸るものではございません」ケネヴは慌てたように言った。「戦って死ぬのが戦士の誇りでありますれば、貴女に子の一人でもおりましたなら、この生命を惜しむものではございません」
 北海の戦士の見本のような男であった。戦いに生き、死ぬ事を望む。その後に残される者の生活の心配はしても、気持ちは考えはしない。
「あなたが戦いで生命を落とすようなことは、なさそうですが」
 エリスは皮肉を込めて言った。
 その言葉のどこが面白かったのか、ケネヴは大きな声で笑った。
「そう思って頂ける内が華、ですな」
「わたしは、あなたのお言葉に従わないかもしれません」
 力を誇る男が、この問いにどう答えるのかが気になった。
「某はそれほど賢しい方でありませんので、そのような時には、貴女の方が正しいのだと存じます。貴女の意見に従う事を否みは致しません」
 少々きまり悪そうに言う男にエリスは愕き、その顔を見つめずにはいられなかった。身体が大きく、力自慢の男は、頑固で自分を曲げない印象が強かった。しかし、家庭の中では、案外と()には弱いのかもしれない。
 本質では良い人であり、複雑な人ではないのだろう。自分から心が離れぬ限りは、大人しくもしていよう。問題は、そこだった。アスヴァルドのような男ならば、ヴァドルを手本に考えれば良いだろう。だが、エリスは、ケネヴのような男達とは余り関りを持って来なかった。弟達の中にも、そのような特徴を見た事もなかった。
 アスヴァルドは、ケネヴの事を見た通りの人だと言った。
 それを信用するならば、この赤毛の男は、正直で誠実なのであろう。嘘や偽りを述べるような人ではないだろう。人の機嫌を取る事もないだろうが、他人がどう思うおうと気にもかけないだろうと思われた。
「これは、アスヴァルドさまにもお訊ねしたことですが、あなたは、他のお二人について、どう評されますか。何も知らないわたしに、教えてはくださいませんか」
 ケネヴは赤い髪に手をやり、くしゃくしゃと掻き回した。自分が求婚している娘の前で、競争相手を如何様に評価するか、難しい問題である事は確かであった。暫く、そのようにして考えている風であったが、やがて、口を開いた。
「アスヴァルド殿は、非常に賢明な方です。知略に長け、集会でも拝見いたしましたが、遊戯盤では見事な腕前を披露されておりました。目立たぬが、尊敬に値する方です」
 そこで、少し言葉を切って再び考え込んだ。
「サムル殿は確かに集会でお会いしましたが、申し訳ありません、それほど印象に残っている訳ではありません。何しろ、人が多かったですし、常に行動を共にしておられた父親の戦士長ヴェステイン殿は、我々に対して御子息を紹介して下さる事はありませんでした。本より無口な方であれば、それも致し方のない事とは存じますが」
 全く、他意のなさそうな言い方であった。どこまでも、お人好しな性格が見えてくるようであった。
 大きな声と身振りさえ別にすれば、悪い人ではない、というのが難点であった。
 誰を父が選ぼうと、変わりはないように思えた。誰も来なくなっても、自分が困らないのであれば、それで良いのではないだろうか。母と二人で静かに過ごし、いずれロロが娶るであろう女性に良い顔をされなくてもかまわない。両親が亡くなれば、自分に残された財産で農場を買って引っ込んでしまえば、誰の迷惑にもならないであろう。
 愛も恋も知らずに過ごした事を、自らの家族を持てなかった事を、少しは寂しく思うだろうが、自分の性格から言って、好感が持てるという一事を以て生涯を共にできるとは信じられなかった。
 結婚して後に、誰かを愛しても、その想いを胸に秘めたままにしておけるものなのだろうか。
 アスヴァルドは、そうしている分には構わないと思っているようであった。秘密に立ち入らないとは、その事を指しているようだった。年若く、激しい性格の自分を妻に迎えるにあたっての、あの男の覚悟であっただろう。
 ケネヴは、どうなのか。
 それをこの男に問うのは残酷な気がした。

 サムルは、この日は自分からケネヴに声を掛けた。機嫌を損じた風もなく、ケネヴは順番をサムルに譲った。
昨日(さくじつ)の件は、考えて頂けましたか」
 その第一声に、エリスはむっとした。緑の目が、それに気付いたかのように細められた。
「そのお顔では、真剣には取っていらっしゃらないようですね」
 考えないではなかった。しかし、真に受けても良いのだろうかという疑いも、同時に持っていた。
 この男は曲者だ。
 直感が、そう言っていた。見た目に悪いところはない。容姿も態度も許容範囲だ。だが、どこか摑みどころがなかった。アスヴァルドもケネヴも、この男の本質を捉えきれてはいない。男同士、戦士同士で評価しがたい男を、どのように見れば良いのか、エリスには分からなかった。
 それに、あの提案を、全て本気だと受け取っても良いのだろうか。
 確かに、サムルは白鷹ロルフの後ろ盾を必要としているだろう。今の族長が実力を認めているとは言え、次の代にはどうなるか分からないような危うい位置にいるようだ。次の族長に快く思われていないのであれば、父に何かあった時、自分の地位は保証されるのか。その際、ロロは中つ海の血を引いているからと、部族や他の族長より軽く見られる事はないのか。
 それを、この男はどのように考えているのだろうか。
「考えなかった訳ではありません。ただ、初対面であのような提案をするあなたを、わたしはどこまで信用してよいのか迷っているだけです」
 少し、突き放すような口調になった。
「正直なのは、良い事です」
 サムルは笑った。この男は、先の二人とは違っていた。唯論、昨日、エリスがソルハルに刃を突き付ける姿を見た、という事もあるのかもしれない。砕けた話し方で、馴れ馴れしいと言っても良いくらいであった。
「私は、出来るだけ誠実に、率直にお話したつもりです。何か、引っかかるところがありましたか」
「――いいえ、別に」
 エリスは憮然として答えた。
「それでは、少し、付け足しましょうか」サムルは言った。「法では、離婚の自由は妻にもありますが、我々の結婚は契約であれば、男子一人を儲けるまでは互いに離婚はなしです。離婚をする場合でも、男子まれ女子まれ、法の(もと)に子は私の養育下に置かれます。どちらが切り出すにしても、法に則った手続きをする事、貴女は私から自由になる代わりに、子が成人して自ら望むまで会わぬ事、私は貴女から自由になる代わりに、後の貴女の人生には一切、関わらない事。貴女に恋人が現れた時、子が女子ばかりであった時や恵まれなかった時には、また、話し合えば良いでしょう」
「口約束だけでは、何とでも言えるわ」
 サムルはにっと笑った。想定内の問いであったのかもしれない。
「これは、我々の間だけの密約であれば、明文化して余人に知られる危険を冒したくはないのですが」
「オルトは聞いているわ」
 ちらりと見て、エリスは言った。年を取ったとは言え、オルトの耳は遠くない。
「私は、白鷹殿に知られるのを恐れるのではありません。島の者に、子に知られるのを恐れるのです」
 書付をどこに隠そうとも、何かの拍子に子供は見付けてしまうかもしれない。文字を知っていれば、内容を知られるのはまずい。他人に見せられても困る。
「それでは、何をもって、あなたがその約束を守ってくださると信じればよいのですか」
「信用、でしょうね」
 何もかも見通しているかのような、緑の目が気になった。
「あなたを信用する理由がないわ」
 エリスは呟いた。それを聞き取ったのか、サムルは笑った。
「それしか、私が提示できるものはありません。貴女が私を信用できないのであれば、それまでの話です。しかし、考える価値はあると思いますが」
 黙って、エリスはサムルの言葉を嚙み締めた。一考の価値がある事は、昨日の時点で気付いていた。しかし、アスヴァルドとケネヴから聞き出した事どもと共に、じっくりと考える必要があった。誰の条件が、最も自分の生き方を活かせるのかを、較べなくてはならなかった。
「あなたは、他の二人をどう評するのかしら」
 同じ問いをこの男にもしてみた。
「他人を評するだけの人間ではありませんよ」
 サムルは肩を竦めた。「その問いを、貴女はお二人にもなさったのでしょうが」
 この男には先を読まれてばかりいるような気がした。何を言っても、この男を愕かす事は出来ないのか。
「あなたの、でなくても構わないわ。あなたの知っていることを教えて欲しいだけよ」
「さて」サムルは笑みを浮かべて顎に手をやった。「私が、お二人の何を知りましょうか。私が島外の集会に参加したのは今回が初めてですし、人の噂ほど、あてにならぬものもないでしょう」
 エリスの苛立ちはつのった。のらくらと逃げるつもりなのか。
 そんなエリスを、サムルは余裕綽々といった風情で見ていた。その事にも苛立った。
「アスヴァルド殿は――」サムルは口を開いた。「ご自分から意見を述べられる事はまず、ありませんね。族長である父君や兄君がその気性を良くご存知であるからこそ、その知力が活かされております。遊戯盤を別にすれば、他者と競う事は集会に於いてはありませんでした。あの方が競い勝って求婚にいらっしゃった事自体が、愕きです。
「ケネヴ殿は、明るいお人です。酒も賭け事も、それなりに、と申しておきましょう。戦士として慕う人も多い。遊戯盤のように頭を使う遊びよりも、試合や力較べがお好きです。裏表のないお人ですので、貴女に偽りを述べる事はないと思いますが」
「悪いことは言わないのね」
「私が、ですか」サムルは少し、おどけたように言った。「悪い事を申しても、貴女の印象を損ねるだけで、私に益はないでしょう。貴女に選んで欲しければ、正直にもなりますよ」
 正直、という言葉が、最も似合わない話し方に、エリスは呆れた。この男は、全てを本気で言っているのだろうか。自分を騙そうとしているのではないだろうか、という思いが、興ってきた。
 父である白鷹ロルフの後ろ盾が欲しい、というのは本心だろう。
 だが、約束を守るとは限らない。そうなって気付いても、誰も助けてはくれないのだ。
「貴女は、私についてもお二方にお訊ねでしょう。私がどのように見られているか、お分かりになったと思いますが」
「お二人とも、悪いことはおっしゃいませんでした」
「そういう方々ではありませんからね」相変わらず余裕の表情で、サムルはエリスを見た。「貴女にとっては、厄介な事でしょう」
「あなたと一緒になれば、喧嘩が絶えなくなりそうだわ」
 サムルは声を上げて笑った。
「そのくらいは我慢しますよ。私が外に出ている間も、貴女は家に縛られるのですから、多少の理不尽な言葉には耐えねばなりますまい」
 理不尽を言う女だと思われている事に、腹が立った。
「あなたが、わたしに我慢できるかどうかよりも、わたしがあなたに我慢できるかが問題だわ」
「私は、これでも大人しい男ですよ。貴女を煩わせるような事はないと思いますが」
 そういうところが、気に入らなかった。揶揄われているとしか思えなかった。確かに、エリスはまだ十七歳だ。数年とは言え、戦士として経験を積んだ男からすると子供に見えるかもしれない。それでも、軽くあしらわれるのは良い気持ちはしなかった。
「怒らせましたか」
 サムルが言った。だが、全く心配はしていないようであった。ソルハルとはまた違った意味での、嫌な笑顔をしていた。面白がっているのかもしれない。
「私は恐らく、白鷹殿にとっては論外の求婚者でしょう。貴女を怒らせてしまったのなら、望みは全くなくなってしまいますね」
「では、なぜ、わたしの機嫌を損じるかもしれないような言葉を口にされるのですか」
 全く、不可解な男であった。本気で求婚をし、選ばれる為に提案をするならば、エリスの機嫌が気になるのではないか、と思った。
 サムルは肩を竦めた。
「貴女に本来の自分を見せるのを、躊躇うものではありません。それでなくては、不公平でしょう」
 あの時の事だ。ソルハルに馬乗りになって刃を突き付けていた自分を言っているのだ。エリスの顔に血が上った。
「あれが、わたしの本性だと言うのですか」
「違いますか」
 相変わらずの、にやにや笑いだ。それは、エリスの気に障った。
「貴女は私に対して、何も偽る必要がないのですよ。気性も心得て、私は貴女に取り引きを持ちかけているのですから、ご自分の思っていらっしゃる事を、包み隠さず口になさって構わないのです。それは、貴女にとって大きな利点ではないですか。その代わり、私も忌憚なく申し上げますが」
 一言も、返す事が出来なかった。
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