第6章・航路

文字数 7,866文字

 ティナは遠ざかる城砦を見ていた。
 結局、アーロンとは一度も目が合わなかった。
 どうしてこうなってしまったのだろうと思う。
「どうして、お部屋にいらっしゃってくださらなかったのですか」
 乳母は泣いた。
 だが、自分があの時、あの場にいたからこそ、弟の生命は助かったのではなかったか。奇跡的に脚が動いたからこそ、助けられたのではなかっただろうか。
 弟を助けた事に後悔はなかった。
 こんな風になるとは思ってもみなかっただけだ。
 飲んだくれの碌でもない騎士のした事の為に生命をかける価値などなかったのにと、侍女達も言った。領主や騎士長が、きっと何か良い手を考えて下さったのに、と。
 他に方法があっただろうか。あの北海人は本気だった。
 だから、自分も殺されるものと思っていた。それなら、一瞬で済む。しかし、まさか、北海へ連れて行かれる事になろうとは。それもたった一人で。
 男達が櫂を仕舞った。そして、甲板を走り、帆を上げ始めた。
 朝には、こんな事になるとは思ってもいなかった。ふた月後に迫ったアーロンとの結婚式の事で一杯だった。それは、皆も同じだったはずだ。それが、北海人の男の中にたった一人で放り込まれた。自分を妻にすると言った男は、ずっと舳先に立ったままだ。
 誰も何も出来ないなど、思わなかった。きっと、何か良い解決策があるだろうと思っていた。騎士達が棒立ちになっているのを見たのは初めてだった。何がどうなったのかも、ティナにはまだ分かってはいなかった。そもそも、北海の男達は何をしに来たのかも知らなかった。
 そして、救いを求めようと見たアーロンは、決して自分の方に目を向けなかった。
 それが、哀しかった。
 何があっても、貴女を守ります。
 そう言ったのではなかっただろうか。
 詩の中でも、どのような困難が待ち受けていようと、決して離れはしないと書いてきたのではなかったのか。
 あれは全て、空想にすぎなかったのか。
 互いに、恋の熱に浮かれていたに過ぎなかったのか。
 涙も出てはこなかった。
 ティナはようやくの事で、港から目を離した。
 あの北海人の男が何を考えているのかは分からない。何故、自分を妻にすると言い出したのか。
 だが、それで全てが解決してしまった。
 一体、何の目的でこの連中はやって来たのだろうか。唯の掠奪ではなさそうだった。
 数人の男達が艫に来た。ティナはびくりとしてせり上がった艫をよじ登った。
 男達はだが、ティナには目もくれず、黙々と作業をした。そして天幕が張られた。あの男が大股で舳先からやって来て、ティナの嫁入り道具を開けた。何やら探している風だった。
「おい」
 男が、美しく絵付けられた蓋付きの容器を手にティナに言った。
「これを持って中に入っていろ。始末は自分でするんだ」
 それだけを言い、男は舳先へ戻ろうとした。
「一体、これは――」
 くるりと男が振り返った。その顔は不機嫌そうだった。
「便所壺だ」
 男が言い、辺りに静かな笑いが漏れた。直截的な言い方に、ティナは真っ赤になった。これは余った麵麭(ぱん)を保存する容器だ。一体何を言うのかと、ティナは道具入れにそれを戻し、やはり美しく絵付けされた寝室壺を取り出した。そして、天幕の中にそれを隠しながら入った。
 中はそれ程広くはなかった。横になるのがせいぜいだろう。ティナの衣装箱も布道具箱も、ここに入っていた。
 ティナはそっと布支度の箱を開けた。アーロンの頭文字を刺繍した物は全て置いて来たので、中身は半分ほどだ。その分、新しい布が詰められている。今度は、あの男の頭文字を刺繍した物を作らねばならないのだろうか。
 見知らぬ男と結婚するなんて、出来っこないと思っていた。だが、実際はどうだろう。結局、自分は幼馴染みのアーロンと別れねばならなかった。もう二度とは会えぬというのに、アーロンは自分の方を見なかった。自分は、決してアーロンの事を忘れないだろう。それなのに、最後の最後まで、アーロンは自分を見てはくれなかった。最後に一目だけでも、とは思ってはくれなかったのか。自分の不甲斐なさの中に、閉じこもってしまったのか。
 ティナは北海の男を思った。
 あの男は恐ろしい。例え碌でもない人間であったとしても、騎士を平気で殺した。幼い弟まで殺そうとした。あの時脚が動いたのは、恐らく、神が弟を助けようとなさったからなのだ。
 金色の、肩よりも長い髪を女のように後ろで三つ編みにしていた。それが、船に乗ってからはほどかれて風に吹かれている。中年男のように髭を生やしているが、実際にはまだ若く見えた。青い眼は、夏の空のようだった。他の北海の男に較べると細身であるが、城砦の騎士達よりも背が高く、肩幅も広い。
 顔はまるで聖堂の彫像だとティナは思った。アーロンの横顔を彫像の「ようだ」とは思った事があったが、男は彫像「そのもの」だった。
 荷馬車で隣に座っていると、その存在感に圧倒されそうだった。尿と血の臭いに混じって、潮の香りがした。
 そうだ、服を、弟が汚してしまったのだった。
 どうしようかとティナは思った。男物の服の用意など、ない。あったとしても、あの背の高い北海人に合う大きさの物などなかっただろう。
 そっと、天幕から外を覗いた。
 男達は帆を張り終えるとやる事がないのか、思い思いの格好で寛いでいた。あの男はと見ると、既に着替えたのか、違う色の衣服を身に着けていた。北海の男は、着替えを持っているのだ。このような平べったい船の何処にそのような物を仕舞う場所があるのか、ティナには見当も付かなかった。
 ほっとして天幕に引っ込むと、様々な思いが胸を去来した。
 もっとしっかりと別れを言いたかった。余りにも急なせいで、妹達にも弟にも、碌な事が言えなかった。アーロンと結婚しても城砦に住む事になるのだから、大した別れの言葉は必要なかった。結婚を控えていながらも、そのような言葉を用意をしていなかった。両親にも、何も言えなかった。
 ティナは膝を抱え込んだ。
 愛しい人達には二度と会えない。これはそういう旅なのだ。そう思うと、涙が滲んだ。もっと盛大に流れるものだと思ったが、そうではなかった。まだ、現実感に乏しいのかもしれない。全てが突然に、変わってしまったから。
 城砦に来る客からはよく似ている事で愕かれ、また仲の良いことで褒められる三姉妹だった。弟は末っ子のせいか、何時までも赤ん坊のように感じてしまっていた。乳母は口うるさいが優しかった。賑やかで噂好きの侍女達だった。いつも尊敬していた両親だった。頼りになる騎士長だったアーロンの父親。愛しいアーロン。
 全てが遠く去ってしまうのだ。野蛮な北海へと、嫁がねばならなくなった。
 どういう場所なのかも分からない。ただ、人の住む場所ではない事だけは確かだった。神官達も、北海は呪われた場所だと言っていた。
 そのような場所で、これからの一生を過ごさなくてはならない。
 そこには、優しいものも美しいものもないのだろう。野蛮な生活がどういうものなのか、ティナには想像も出来なかった。大体が、麵麭入れと寝室壺を間違えるような人だ。美しい物に対しても、何の感情も抱いてはいないに違いない。
 あのような美しい顔立ちをしていて――
 そう思ってティナは急いでその考えを振り払った。それとこれとは別物だ。姿形が美しいからと言って、心までも美しいとは限らない。美しい物を解するとは限らない。初めて見る髪と目の色、そして顔立ちに惑わされてはいけない。北海人は、神の怒りを買った人々なのだ。呪われ、永遠に神の園には入る事を許されない人々だ。
 その中に一人、放り出される。
 ティナは心細くなった。誰も知っている人間がいない。見知った物もない。そんな所へ行かなくてはならないのだ。瀆神的な儀式に参列させられるかもしれない。拒めば殺されるかもしれない。
 いや、いっその事、殺された方がましなのかもしれない。自分は、弟の生命乞いをした時に、死を覚悟しはしなかっただろうか。ひと思いに殺されるのならば、その方が良い。自ら生命を断つ事は、あの男から止められた。妻になるまでは――あの男の子を産むまでは、そのような事をしようものならば、両親の元に再び押しかけぬとも限らぬ。今度は妹を連れて行くのかもしれない。それだけは、避けねばならない。何の為に自分が今、ここにいるのか分からぬではないか。
 荒涼とした地が、ティナの脳裏に浮かんだ。北海とは、何もない場所なのではないだろうか。だから、このように中つ海に掠奪に来るのではないか。服装は文明人のようだが、中身は違う。神は何故、北海人のような者をお造りになり賜うたのか。文明化されていない者達を、中つ海に文明化させようとお考えなのだろうか。
 神の考えは、ティナには分からなかった。それは、あの男の心を探るのと同じくらい、難しい。

 夕刻には、男がティナの天幕に食事を差し入れた。麦芽酒(エール)と干し肉、平たく焼いた薄くて堅い麵麭の一片だった。貧しいにも程があると思ったが、空腹には勝てなかった。干し肉は堅く、良く噛まないと喉を通らなかったが、最悪だったのは麵麭だ。どうしても割ることが出来ず、仕方なくティナは麦芽酒に浸してふやかした。行儀は悪かったが、そんな事は言っていられないほどに空腹だった。食事など、喉を通らぬのが普通であろうに、これは一体、どうした事だろう。誰の姿も見えない事と、この船の揺れがそれを招いているのだろうかと思った。
 思えば、港町を有する領主の家族なのに、船に乗ったことはなかった。船は常に出入りしていたので珍しくはなかったが、この船は初めて見る形だった。細長く、舳先と艫とが同じようにせり上がっている。舳先に怪物の頭が彫られているのも奇妙だ。櫂を使って船を漕ぐのも、漁船以外では見た事がなかった。
 何もかもが、やはり違うのだ。
 ティナは思った。
 外からは男達の声がしていた。何を言っているのかははっきりとは聞き取れなかったが、耳を塞ぎたかった。例え酔っ払っていても、騎士とは違う。下卑た声に甲板か何かを叩く音。耐えられたものではなかった。これを毎日、聞かされる事になるのかと思うと、暗澹たる思いだった。
 そっと、食べ終わった食器を天幕から出した。なるべく外からは自分の姿が見えないようにして。
 外の宴は果てしもなく続くかと思われたが、やがて静かになって行き、鼾に取って代わられた。ほっとして、ティナはあの男から言われた事を思い出した。寝室壺の始末は自分でしなくてはならない。天幕から外を窺った。誰もが眠っているようで、舵取りだけが黒い影となって見えた。幸いにも後ろを向いている。この隙に始末をするのが、領主の娘としてのせめてもの矜持だった。あの男が、大声であのように返さなければ、もう少し堂々としていられたものをと思った。
 中身を海に空け、天幕の中へ戻ろうとした時、月の光に動く者があるのが見えた。
 息を殺して様子を窺うと、舳先にあの男がいた。
 じっと船の行きし方を見つめていた。その顔は厳しく、冷たかった。何かを思い詰めたような表情だった。
「お嬢さん」
 突然、足許から声がした。この船の船長らしき男だった。毛皮にくるまって横になり、ティナを見上げていた。ティナは愕いたが、何とか声を漏らすのは避けた。
「お嬢さん」再び男は言った。「あんまりじっと見ん方が良い」
 ティナは寝室壺を背後に隠した。顔が赤くなるのが分かった。
「族長は、そっとしておく事だ。あんたが悪い訳ではないのだがな」
 静かにそれだけを言うと、男は目を閉じた。
 ティナは天幕に戻った。
 族長、と男は言った。あの男は、北海の海賊七部族の族長の一人だったのだ。ティナは座り込んだ。
 恐ろしい北海の男達の中でも、最も恐ろしいと言われる族長。その男に、自分は嫁がなくてはならないのか。
 身体が震えた。
 あの美しい姿の男が、族長。だから、顔色一つ変えずに騎士を殺す事が出来たのか、子供を殺そうとしたのか。
 大体、嫁ぐと言う事からして、本当の事なのだろうか。実際には、もう既に奥方がいて、自分は第二夫人であれば良い方なのではないだろうか。
 今まで北海の海賊について耳にした様々な噂が甦った。
 弟を助けたという自分の行動は間違ってはいなかった。なのに何故、神はこのような試練をお与えになるのだろうか。それが、乗り越えられるからこその試練なのだと神官達は言う。だが、本当に自分はこの試練を乗り越える事ができるのだろうか。
 大声を上げて泣きたいと思う程だった。それは領主の娘としての矜持が許さなかった。如何に北海の海賊と言えど、自由にならぬものもあるのだという事を知らしめなくてはならない。第二夫人や側女など、真っ平だった。
 そう、自分とあの男とは夫婦になるのだ。
 その事が重くティナの心にのしかかって来た。アーロンとの抱擁は、天にも昇る心地がした。それは、長く一緒にいながらも、夏至と冬至の舞踏の時以外は決して触れ合えなかったからだろう。愛してもいた。だが、あの男の事は愛してもいない。美しいとは思っても、それは愛ではない。そのような男と抱擁し合い、唇付けし、それ以上の事を褥でしなくてはならないのか。
 それを考えるとぞっとした。
 同じ中つ海の者であってさえも、そのような関係になるのは御免だと思っていた。耐えられないと思っていた。それが、今度は北海の野蛮人と。
 他の城砦の者を軽く見た罰なのだろうか。その為に、このような試練を神はお与えになったのだろうか。
 ぽたぽたと涙がこぼれた。アーロンに会いたかった。その腕の中で、これは全て悪い夢なのだと言って欲しかった。慰めて欲しかった。
 だが、これが自分の現実だ。船の上では逃げ出すこともかなわない。逃げ出したとて、どうなると言うのだろう。再び北海人が領地へやって来るだけの事だ。それでは、自分のした事が全て無駄になってしまう。
 忍び泣きながら、ティナはいつの間にか眠ってしまった。

 気付いた時には朝だった。天幕の入り口に麦芽酒の入った壺とあの堅い麵麭、干し魚が置いてあった。誰かに泣き疲れて眠り込んでしまったところを見られたかもしれないと思うと、ティナは顔に血が上るのを感じた。良人でもない男に寝顔を見られるなど、あってはならない事だった。
 杯に麦芽酒を注ぐと、ゆっくりと飲んだ。このように食事を差し入れて貰えるのならば、外に出る必要は夜中以外にはないだろう。誰にも姿を見られず、誰の姿も見ないで済むのは有り難かった。
 男達は、昨夜の騒ぎが嘘のように大人しかった。時折聞こえる歌声や何事かを指示するような声以外は、聞こえなかった。
 決して美味しいとは思えない食事を済ませると、ティナは昨夜と同じようにそっと天幕の外に食器を出した。麦芽酒の壺と杯は手許に置いておく。まだたっぷりと残っており、今日一日の水分はそれで充分、足りそうだった。
 船がどれ程の速度で航行しているのか、北海までどの位かかるのか、ティナには全く分からなかった。誰かに訊けば答えてくれるかもしれなかったが、それは出来ないとすぐに思った。
 どのみち、逃げられはしないのだ。着くまでじっとここにいるのが良いだろうと思った。夜の海が漆黒で恐ろしいという事は、昨夜、知った。陸地が全く見えないであろう一面の青を見るのも怖かった。
 それは、あの男の目を思わせるから。
 その考えに、ティナはどきりとした。
 他にも青い眼の男はこの船に何人もいた。だが、あの男の目は際立っていた。厳しく、笑みのかけらもなかった。だが、それだけではない。それ以上の

があの男の目にはあった。
 北海の族長。名はまだ知らない。良人となる人なのに、自分はあの男の名さえも知らないのだ。それでも、あの男は気にしていないようだった。会ったばかりの自分を妻にすると言うような男だ。何を考えているのか、知れたものではなかった。
 北海へ着いたなら、毎日あの男の青い眼を見なくてはならないのだろう。城砦でティナを見つめた時の目は、何の感情も語ってはくれなかった。北海人に、複雑な感情があるとは思えなかった。何しろ、まだ文明化されてはいないのだ。ティナのこの複雑な思いを、北海の男達が――いや、女達も理解できるとは思わなかった。
 風と波とでぎしぎしと揺れ、軋む船上では何もする事がなかった。その代わりに、考える時間はたっぷりとあった。ティナはこれからの事を考えると、自分を憐れむ事しか出来なかった。
 自分を憐れんでどうなるというものでもなかったが、未来に希望はなかった。あるのは、ただ、この茫洋とした海のような先の見えない不安のみ。それでも、生きて行かなくてはならない。それが、ティナの人生だった。

 船に乗り組んで五日目、天幕の外が騒がしくなった。何事かと思いながらも、ティナは動けずにいた。すると、天幕の入り口が開き、船長が顔を覗かせた。
「島が見えてきました」
 それだけを言うと、船長は去った。
 好奇心に、ティナは立ち上がり、天幕を出た。前方に、島が見えた。緑に覆われた小さな島だった。その周りには、岩礁と区別が付かないような小さな島が幾つもあった。
 あの島で、一生を送るのだ。
 ティナは思った。
 それがどのようなものかは分からない。だが、もし、これが神の与え賜うた試練ならば、乗り越えて見せなくてはならない。野蛮な北海人を、文明へと導かなくてはならない。
 舳先には、相変わらずあの男がいた。ティナの姿に気付いたのか、船長にティナを指さして大声で何事かを命じていた。その声は風と唸る索具の音に紛れて聞き取れなかった。
「天幕の中にお戻り下さい」船長が来て言った。「誰かが呼びに来るまで、何事があっても、出ないで下さい」
 その真剣な顔には、頷くしかなかった。天幕に戻ると、大人しくしていた。男達が甲板を走り回る音がした。何が行われているのかは分からなかったが、とにかく、入港の準備をしているであろう。
 ややすると、船底に何かが当たる感触がした。
 難破する、とティナは思った。このまま、難破してしまえば、つらい思いはしないで済むかもしれない。
 ざりざりという音と共に船は進み、やがて、止まった。
 男達が何事かを話しているのが聞こえたが、ティナには天幕の隙間から外を覗く勇気もなかった。じっとしていろと言われたのだから、そうしていなければ何か恐ろしい事が起こるのではないかという気持ちになった。死ぬのならば、何も分からない方がいっその事良いのかもしれない。
 だが、男達の声は段々と遠ざかっているようだった。
「さ、出て下さい」
 船長が姿を現した。「島に着きました」
 ティナは言われるがままに天幕を出た。そこは浜辺で、人々が大勢集まって来ていた。船は、漁船のように浜に上げられていた。人々の目は全てティナを見てはいなかった。その視線を辿ると、先にはあの男がいた。族長なのだから、当然と言えば当然なのだろう、誰もが注目している。しかし、あの男はそんな事には頓着していないようであった。胸の前に大きな荷物を抱え、黙って歩いて行く。
「さ、こちらです。荷物は後から運ばせますから」
 船長の言葉に、ティナは舷側へ向かった。そこには渡し板が掛けられており、ティナは船長の手を借りてそこへ立った。思ったよりも高くはなかった。それを下りると、遂に島だった。
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