『飼い犬に手を噛まれる』(クリア「魔術士系」)
文字数 908文字
がぷ。
見事に足首に食いつかれているが、見た目ほど顎に力はなく、痛みはない。
ただの獣とは異なり、人並みの知能がある魔獣だ。無意味に人を噛まないし、噛んだとしても演技である。暴走時は別として、通常時の魔獣は下手な人間より安全な相手だ。
だが、言葉が交わせないから意味不明で困る。
*****
「ちょっとシロさん」
足首に食いついたままの魔獣に話しかけた。
周囲には他に誰もいない。というか、他に誰かいればクリア自身が問いかけるより早くシロを窘める声がかかっているか、そもそもシロはこんな行動をしていないだろう。
ここにはクリアしかいないから、この白い魔獣はこんなことをしているのだ。
そこまではわかるけれど、じゃあ何故となると完全にお手上げである。
「何か御用かね?」
別に怒ってはいない。というか、怒る理由はない。足首をぱっくりされてるとはいえ、明らかに手加減されているのに怒るなど出来ない。
はむはむ。
返事の代わりか、魔獣はもごもごと口を動かした。
痛くは無いが、非常にくすぐったい。布地の上からとはいえ、牙や舌がもぞもぞ動く感触はあるから、下手なくすぐりよりもくすぐったい。
「暇ならイギーのとこ行っておいで? っていうか今日は何でここにいるの」
今の時間なら自己鍛錬をしているだろうイガルドと一緒にいることの方が多い白い獣。
それ以外だと大体サフと一緒なので、実はこの獣がクリアだけと一緒にいるということは少なかったりする。
別にシロがそこにいることを嫌がっている訳では無いが、こちらの足に悪戯する程、暇を持て余しているならそっちに行った方が良いのでは無いかと思っただけだ。
だがお気に召さなかったのか。
むにゅむぎゅ
歯ぎしりのような甘噛みをされて、その感触にクリアは降参した。
こんな状態で農作業は無理である。
「わかった、わかりましたーっ! 僕に何をせよと申してるのかねシロさんは!」
雑草を抜く手を止めて、手袋も外して、わしゃわしゃとその頭を撫でながら改めて向き合うと、満足したように獣はやっと足首から口を離してくれた。
賢いというのも、時には困りものだ。
今日の分の作業は諦めて、クリアは魔獣に付き合う事にした。
見事に足首に食いつかれているが、見た目ほど顎に力はなく、痛みはない。
ただの獣とは異なり、人並みの知能がある魔獣だ。無意味に人を噛まないし、噛んだとしても演技である。暴走時は別として、通常時の魔獣は下手な人間より安全な相手だ。
だが、言葉が交わせないから意味不明で困る。
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「ちょっとシロさん」
足首に食いついたままの魔獣に話しかけた。
周囲には他に誰もいない。というか、他に誰かいればクリア自身が問いかけるより早くシロを窘める声がかかっているか、そもそもシロはこんな行動をしていないだろう。
ここにはクリアしかいないから、この白い魔獣はこんなことをしているのだ。
そこまではわかるけれど、じゃあ何故となると完全にお手上げである。
「何か御用かね?」
別に怒ってはいない。というか、怒る理由はない。足首をぱっくりされてるとはいえ、明らかに手加減されているのに怒るなど出来ない。
はむはむ。
返事の代わりか、魔獣はもごもごと口を動かした。
痛くは無いが、非常にくすぐったい。布地の上からとはいえ、牙や舌がもぞもぞ動く感触はあるから、下手なくすぐりよりもくすぐったい。
「暇ならイギーのとこ行っておいで? っていうか今日は何でここにいるの」
今の時間なら自己鍛錬をしているだろうイガルドと一緒にいることの方が多い白い獣。
それ以外だと大体サフと一緒なので、実はこの獣がクリアだけと一緒にいるということは少なかったりする。
別にシロがそこにいることを嫌がっている訳では無いが、こちらの足に悪戯する程、暇を持て余しているならそっちに行った方が良いのでは無いかと思っただけだ。
だがお気に召さなかったのか。
むにゅむぎゅ
歯ぎしりのような甘噛みをされて、その感触にクリアは降参した。
こんな状態で農作業は無理である。
「わかった、わかりましたーっ! 僕に何をせよと申してるのかねシロさんは!」
雑草を抜く手を止めて、手袋も外して、わしゃわしゃとその頭を撫でながら改めて向き合うと、満足したように獣はやっと足首から口を離してくれた。
賢いというのも、時には困りものだ。
今日の分の作業は諦めて、クリアは魔獣に付き合う事にした。