代表首席もしもバージョンその1

文字数 1,206文字

「ちょ、師匠? 何やってんですか!」
「なんとなく?」
「なんとなくで踏みつけるとかどういうことーっ!」
「一種の師弟愛の表現みたいじゃない?」
「嫌ですよこんな暴力的愛情!」
「あらー私の愛が気にくわないと?」
「気にくわないのは暴力です!」
「我儘ねぇ」
「どっちがーっ!?」
*****

もしも「代表首席の選ぶ自由の話」の彼が、未来(師匠没後)の彼だったら、という謎設定です。
こちらは「退学者 襲われる」辺り。
以下は、背後から師匠に蹴り倒され上に乗られている彼のその後です。
(もしも設定なので本編は一瞬忘れてください)
*****

 師匠は昔から短慮な部分がある。
 頭は良いし知識もあるし判断力も理解力もある女性だが、時々頭を使うことを丸っと放棄して手っ取り早く実力行使に訴えたがる困った部分があるのだ。しかも身体能力だって人並み外れた彼女の実力行使は、多くの場合で有効な手段となり得るから本当困る。
 それにしたって、久々に会う弟子を背後から襲って背中に踏ん反り返るのは色々どうかと思うのだが。
 ずっと前に結婚して、もう子もいる女性の行動とは思えない。
「とりあえず重いんでやめてください」
「私が太ってるって言いたいのかしら?」
「軽い方かもしれませんが空気より重いでしょ!」
 思わず叫ぶと、後ろ頭にごりっと鈍い痛みが走った。
 拳が落とされたのだろう。とりあえず、ものすごく痛い。
「女性に重いなんて失言にも程があるわよ?」
「まともな女性はまず後ろから突然蹴り倒した上に背中に乗るなんて事はしないかと」
 まぁこの師匠を普通の女性のくくりに入れたりした日には、その他の女性たちから一斉に苦情を述べられかねないけれど。
 とはいえ、それなりに良い歳になってきたのに、見た目からして褪せるどころか益々完成度が上がっていると巷でも噂の王妃様がこんなことしている場面は、ちょっと他人には見せられそうにない。
 ……誤解されそうなので、彼女の結婚相手にも見せられない気がする。
 誓ってもいいが、自分は彼女とそういう関係ではないし、出会ってから今日までそういう感情を持ったことすらない。
「もー、貴方ってば昔に比べてこーんな生意気になっちゃって」
 ぐりぐり。
 拳が落ちたところにさらに拳を押しつけて来る師匠。昔から容赦ない人だったけれど、相変わらずのようである。
 ものすごく痛い部分に、さらに追撃で超痛い。
「で、いつどいてくれるんですか」
「昔に比べるとがっしりしてるわねぇ背中」
「会話! 会話して師匠!!」
 背中の上でくつろぎ始めた師匠に思わず叫ぶけれど、そんな事を聞いてくれるほど師匠はまともな神経を持ち合わせていないことも、残念なことによく知っているのだ。子どもが出来たから多少落ち着いたんじゃないかなんて、少しでも考えた自分が甘かったらしい。
 びっくりする程変わらない背中の上の師匠を無理に追い払うことも出来ず、どうすればと思いながらため息をついた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み