2018 ナンパの日(似非妖精「私と天使」)

文字数 917文字

「ヘイレディ! 僕とランデブーしない?」
「しないわよ」
「冷たっ! 夏の太陽も凍りつく冷たさ! でもそこが好き!!」
「毎回飽きない?」
「愛を語ることに飽きる気持ちは恋と言わないんだよ?」
「はぁ」
「ソークーッ! でもそこがイイ!!」
「ごめん意味わかんない」
*****

 顔や体型は天使と全く同じである。
 外見で異なるのは、背中から生える羽を妖精のそれで生やしていることが多い位か。
 ただし中身はほぼ別物と言ってもいい位に違う。なんていうか、本体がこんな性格じゃなくて良かったと時々本気で安堵するくらいに違う。
 好意を向けてくれている部分は同じなのだけど、その表現の仕方が全く違って、この妖精のふりをする天使の分身のそれは、とにかく騒がしくて意味不明だった。本体はたまにこちらが反応に困ることをしてくるけれど、分身の方はそもそも反応する意味すらあるか不明な言動をする。
 放っておいても勝手に騒がしくしているけれど、放置するともっと騒がしくなるので、適当に相槌を入れることにしていた。
「リムの冷たさが僕には快適ぃ」
 今日も突然現れて謎の誘いをしてきたのをあしらったら、それに凹むこともなくこちらの肩に乗ってくつろぎ始める。
 長い白銀の髪をさらっと流して肩の上で足をぶらつかせている姿は、本体ではまずお目にかかれないものだ。
 本体はもっと落ち着いた言動をするから、こんな暇を持て余した子どものような動作をすること自体、滅多にない。たまにわざとやることはあっても、こんな風に自然に振る舞うことはまずない。
「あんたって本当にアレの分身なの?」
 時々、実は全く別の何かが来ているんじゃないかと思うことがある。
 それくらい雰囲気の異なる分身に問いかけると、話しかけられたこと自体が嬉しい犬のように喜びを見せて分身は笑った。
「もち! 天界のお仕事も分担されてるくらいの分身だぞ☆」
「あんたにできる仕事なんてあるの?」
「ふっふっふ。それがあるんですな! 僕くらいにならないと難しいお仕事が!!」
「はぁ……」
「聞きたい? おっけー全部教えちゃう〜」
 妙に自慢げに語り始めたその分身は、その後リムから「もういい」とはたき落とされるまで延々と武勇伝を語るのだった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み