『幸せを、(と祈るだけならば)』(シーグ「世界の上を星は巡る」)

文字数 821文字

祈りや願いに意味はない。
そんなものに時間を費やすくらいなら、動くべきだ。頭の中で考えるだけで世の中が変わるなら誰も苦労はしないだろうし、この世はもっと滅茶苦茶だろう。
幸せにしたい相手がいるなら、そうするために動く以外にない。
間違ってるかどうか考えるのは、後でいいんだから。
*****

「よしそこ座れ」
 赤い目を鋭く光らせ親友が言うので、おとなしく指定された床に座った。
 怒っている時の親友に口で勝てた試しはないので、おとなしく従うに限る。
 じゃあ怒らせなければいいじゃないかと言われそうだが、悲しいかな、彼の性分はこの堅物相手に対して普通に振る舞うだけで相手の怒りの琴線を弾くどころかぶった切るので、それは難しい話なのだ。
「さすがに、お前も、俺が何に怒ってるか、わかってんな?」
「来るのが遅かった?」
「ち・が・う・わ!!」
 叫ぶように否定した後、部屋の片隅をばしっと指差す。
「あれを見ろ! お前がこの1週間で送りつけてきたものだ!」
 後見をしている少女が、紆余曲折の後に何故かこの親友の元に収まっている。
 最近やっと自分も立ち直ってきたので、せめてとばかりに必要そうな物を見かけては買って送っているのが現在の日常。
 送ったものが全て未開封のまま部屋に積まれているのはどうかと思うのだが、それを言ったらさらに怒りを増しそうな気がするので我慢する。
「何か問題でも?」
「問題しかねーわ! シエラが生活するのに必要なものは最初から全部揃ってんだよ! これ以上要らねーって位!」
「いやでも何が必要になるかなんて」
「少なくとも! 必要が出たら俺が買うっつーの!!」
「シエラのものは僕が買う!」
「……別にお前が買うんでも構わねーよ。ただ、兎に角、勝手に買って送りつけてくんな!!」
 うちの大きさにも限りがあんだよ! と怒る親友に、怒られつつ内心でため息をついた。
 キールは怒りの沸点が低いのが短所だよなぁ、なんて、知られれば更に怒らせるような事を考えながら。
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