代表首席もしもバージョンその2

文字数 1,411文字

「もう僕だって簡単には落とされませんよ」
「あらそう? じゃあ試してみましょうか」
「え」
「どこまで耐えるか楽しみねぇ」
「まっ、え、なに言ってんですか」
「じゃあ第1段階ー!」
「っぎゃーっ!! 師匠の鬼!」
「まぁ失礼な弟子ね。じゃあ一気に第4段階」
「っっっ!!」
*****

もしも「代表首席の選ぶ自由の話」の彼が、未来(師匠没後)の彼だったら、という謎設定その2。師匠も未来設定(生存の場合)になってるせいで更に謎が深まってます。
こちらは「退学者 落とされる」辺り。
以下は、前話で背中に師匠が乗ってきた彼のその後です。
(もしも設定なので本編は一瞬忘れてください)
*****

 昔を思い出したついでになのか、出会った頃の思い出を辿っていた師匠が「そういえばあの時は深淵から戻すの大変だったわねぇ」なんて言い出したから、反論してたら、思わぬ方向に話が進んだ。
 というか段階ってなんだ。
 1から4に飛んで急に激しさを増した深淵へ引き寄せられる力に、必死に抗う。恐らくこれもなんらかの魔術なのだろうけれど、これほど用途がない魔術も滅多にないだろう。
 そもそも了解なく術士を深淵に落とすのは結構な問題行為である。
 そこまで考えたところで、さああっと弟子の背筋に嫌な汗が流れた。
 普通の魔術士同士であっても十分問題行為なのだが、色付きに対してはどうだっただろうか……という所に思い至ってしまったから。師匠と弟子という永遠の上下関係は、規則上考慮されるのだろうか、と。普通の魔術士に対して以上に、色付きに対しては主の代理という前提もあり結構色んな制限があった筈である。
「ちょ、師匠、師匠! 待って一旦待って!」
「ダメよー、この先まだ3段階あるんだからぁ」
「まだあるんかい!! じゃなくて!」
 師匠の暴挙に関して今更個人的にどうこうと言いたいわけじゃない。
 自分個人だけなら別にまぁいっか、なんだけれど、師匠が罪に問われて欲しい訳じゃないので、これはどうにか止めなければならないのだが、どう伝えれば良いものか。
「あのですね、僕にそういうのは、その」
「何よ、歯切れ悪いわね。はっきり言いなさい」
 別に隠す必要はない称号であるものの、積極的に周りに名乗ったこともないので迷っていた所、師匠が不満げに頭を叩いて来る。この人が称号を知ったところで、急に態度を変えてきたりするのは想像がつかないものの、何となく言い出し辛いものがある。
 迷う弟子を前にして。
「言わないなら一気に7まで飛ぶわよ?」
 元から忍耐力の怪しい師匠があっさりと次の行動に移ろうとする方が早くて、仕方なく答えを吐き出した。
「僕、今、金の称号持ちなんですって!」
 だからこういうのは、と言いかけた弟子に、背中の師匠は「あら」と動きを止めた。
 とうとう言ってしまったと妙な安堵と落胆に襲われる弟子だったけれど、続いた師匠の言葉に弟子の方も動きが止まった。
「じゃあ最初から7で丁度よかったかしらね?」
 いやそういう意味で言ったわけじゃないですけども!
 恐ろしい結論に到達している師匠に説明をしようとした所で、彼女は軽やかに笑いながら弟子の頭を叩く。
「わかってるわよぉ。そういう意味じゃないってのは」
 その言葉にほっと息をついたのもつかの間。
「だって称号持ち同士なら関係ないんですもの」
「……えええええ!?」
「ってことでそーれ7段階目!」
 楽しげな師匠の言葉の直後、意識はさっくりと深淵に落ちた。
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