第36話
文字数 939文字
寧ろ、深大寺創建と確認し合った互いの想いを伝えるには良い機会を得たとも思った。
「そもそも、この道明寺合戦まつりやメインプログラムとなる道明寺交響曲に参加する出演者は、ほとんど地元の市民の方々に参加して貰っています。であるならば、それらの皆さんにも参加して良かった。楽しかったと思って貰うことを私と深大寺創建さんは考え。粗削りで良いから一つのモノを共に創り上げて行く過程そのものを楽しんで貰いたい。モノ創りの苦しみ、楽しさを一から共有し体験することで、それらの醍醐味を味わって貰いたいと考えたのです。
完成度を求めるのなら出演者は全てプロの役者やダンサーにするべきです。しかし、この道明寺合戦まつりのテーマは、そうではないと私も深大寺創建さんも感じました。
共に創り上げて行く・・この想いから。敢えて稽古回数を絞ることで稽古自体が苦しむ場所ではなく楽しむ場所となる工夫をしたのです。そう、稽古すらイベントそのものとすることで参加している全ての方々にとって良い経験、思い出になって欲しいと願ったのです。だからこそ皆で楽しく。それでも試行錯誤を繰り返して仕上げたモノを、まるで出来上がったばかりの温かい料理を出すかのように、本番当日に標準を当てて披露して貰うことがなにより大切だと感じました。
観る人も、参加し出演する人も皆市民。だからどちらにも楽しんで貰いたい。
この道明寺合戦まつりは、そう云うモノでなくてはならない。そう、イベントじゃなくて、
皆の“まつり”でなくてはならないのだと私も深大寺さんも強く想っています。
だから失敗しても良いんです。
粗削りで上等。
クオリティーなんて二の次。
関わったすべての人々が、「あぁ~楽しかった」と思って貰えることが真のテーマだと考えています」と一気にまくしたてる順子の発言に対して、
その場に居合わせた面々全てがこの、「完成度の高い料理を出すのではなく。出来立ての温かい料理を出す。その為に完成を急がずにギリギリまで共に試行錯誤を楽しむ」とい戦略を我が意を得た想いで聞いたのは言うまでもない。
そしてこの考えは順子自身が誰よりも得心した想いだったと云える。