第63話
文字数 913文字
当然、順子もその一人だ。
その場に居る全ての人に達成感と満足感が漂い、それらが包み込んでいる。
弁当が届かないかもしれない事件を、どうにかクリアし全体稽古は粛々と進んだ。
そして、夕方ごろとなり初めて和太鼓集団・風馬のメンバーも参加しての通し稽古が始まると。それまで藪の中だった道明寺交響曲の全体像がその姿を現したのだ。
順子が企画し深大寺創建が総合演出したこの道明寺交響曲は、出演者が総勢200名を超え。
そのうちの九割近くの人が藤井寺市民で風馬の演奏によって繰り広げられるダンスを中心としたパフォーマンス劇となっている。
第一幕「戦のはじまり」。
野本樹里演じる千姫や山西健人演じる後藤又兵衛らによる浪曲師の朗読に沿ったサイレント芝居。
第二幕「うたかたの平和」
地元の道明寺和太鼓クラブによる演奏で、子供たちや大人たちが当時の庶民の衣装を身に纏い村人に扮して安寧の世を悦び謳歌する姿を踊りで、それこそ村祭りを彷彿とさせるシーン。
第三幕「暗躍・忍び」
ここから風馬の演奏が始まり。その演奏に合わせて忍者に扮したダンサーたちが登場。
彼らの暗躍をダンスで表現し平和が打ち砕かれていく様を描いていく。
第四幕「合戦のはじまり・兵どもの闘い」
突如、観客席後方から徳川軍に扮した甲冑姿の一団が踊りながら行進してくる。それをステージ上で待ち構える山西健人扮する後藤又兵衛ら豊臣軍。やがて両軍がぶつかり合う様子をダンスや殺陣で見せ。激戦の末に後藤又兵衛の討ち死によって終了する。そして、
第五幕「鎮魂~レクイエム~」
兵どもの夢の後と化した戦場に樹里が演じる千姫や淀の方などの女性たちが登場し、戦の無常を嘆き悲しむ舞のシーンとなる。
第六幕「平和への祈り」
そして、その悲しみの中から徐々に風馬の演奏が静かに始まり。それまで登場した村人や忍者たちが登場し倒れた兵たちを起こし出して共に踊り出す。最後には観客の人々も巻き込んでの“かぶき踊り”へと発展し深大寺創建が創作した「道明寺の歌」を合唱しフィナーレを迎える。
そう、点と点が線で繋がり遂に全体像が現れた瞬間だった。