第44話
文字数 739文字
そして、「そんな町の人々で組織した道明寺まちづくり協議会の会長を務める林田さんのご苦労は大変なんだろうなと・・お察しします」と順子が言うと、林田は笑顔で順子を見て、「いやぁ、苦労しとるんは僕ではのうて竹田ですわ。あの男が居らなんだらここまでやっては来れんかったと思います。あの男の調整力。そして物事に拘り過ぎず。かと言って人の想いや拘りを軽くも見ずに、その時その時のベストな方法を考え出して実行してくれるのにはホンマ助けられてます。本人には面と向かってこんなこと言ったことありませんけど」と言うと林田が少し照れくさそうな笑みをみせた様に順子には見えた。
「まあ、この話はここだけの話っちゅうことでお願いします。本人に聞かれると気恥ずかしいと云うか調子狂いますから」
「もちろん、今日の話の内容は私の胸にしまっておきます」
「そう言って貰えると助かります」
と言うとビールの追加を注文し、ひと呼吸入れた林田は、
「一つ秘密を共有出来たので、この際、もう一つ内輪の話を聞いて貰えますか?」と言った。
順子はスグに、「トップシークレット、ですよね」と返した。
「そうですね。本人が皆に言うまではそうお願いします。今からお話しすることは、僕と竹田、そして北畠宮司の三人しか知らないことです。でも、竹田や北畠宮司とも相談した結果、桜田さんにも知っておいて貰えたらと・・」
「解りました。秘密、共有させて貰います」と微笑む順子。
二人の姿は傍から見ると楽しい時間を過ごす仕事仲間か、或いは駆け引き真っ最中の不適切な関係の男女にも見えなくはない。
兎にも角にも様々な人々が集う南堀江の夜は更けて行く。