第60話
文字数 692文字
「本当にすみませんでした」
竹原はタブレットの操作と独り言を止め田山を見て聞き返した。
「エッ?どしたの?」
「僕のミスなのに。竹原さんが怒られちゃって。申し訳ないです」と言う田山の様子は、色々とヤラカシたと云う反省から落ち込んだ表情に竹原にも見えた。
「そんなに気にしなくていいよ。最終確認を怠ったのは僕だし。田山君も抱えている仕事の作業量はハンパないからね。アルバイトスタッフに任せちゃうのも。まぁ仕方ないヨ」
「でも、桜田さん。マジギレしてましたよね。折角、採用して貰って初めての現場だと言うのに。ホンと何やってんだか。自分がイヤになります」
「反省する気持ちは大切だよ。でもね、いつまでも引きずってちゃいけない。この手のトラブルはどんなに注意を払っていても起きる時は起きるんだから」
「そうですか・・」
「そうだよ。そりゃ、順子さんと色んなイベント現場を共にしてきたけど。中には信じられない様なトラブルやミスが在ったものさ。
どうしてもこの業界ではイベントごとに寄せ集めのチームを編成しなくちゃいけないから上手く統制が取れなくて、そんなトラブルやミスが起きるんだよ」
竹原の言葉に助けられたのか田山の表情は少しだけ明るさを取り戻し、
「僕が桜田さんや竹原さんのチームで一緒に仕事をさせて貰って五年ほど経ちますけど、昨年の大阪城でのトラブルは驚きました」
「あ~、あれね。あのトラブルはなかなかだったよね」