第55話
文字数 662文字
「結局、想いは同じですから・・」
「想いは同じ・・」
「そうそう、普段はいがみ合う(おう)てても。結局、この町で生まれ育った者同士。郷土愛とでも言うんやろか。この町が好きで、そんでもって何か少しでも町の為になることはと考え行動している。まぁ、単純明快ですわ。ねぇ、宮司さん」
すると北畠宮司は目線をケッタイなオジサンたちに向けたまま、「そうですね・・」とだけ言うと少し微笑んだ様に順子には見えた。
林田の話は続き、
「竹田は大川さんがこの町を離れることを聞かされて、初めて大川さんという存在と向き合う(おう)たんやと思いますわ。それまでは意見の食い違いから距離を取っていたんやけど。
それでも仲間で在ることを思い知らされたんでしょう。その仲間が去って行く。
寂しい。とても寂しい。仕事の都合とはいえ、どうにもこうにも寂しゅうてたまらん。大川さんだって同じ気持ちでしょう。それなのに癖と云うか意地を張ってしまう。このままではアカンと、実は二人とも考えてたんでしょうな。
まぁそんな時、いつも誰よりも速く動くんが竹田ですわ。このまま別れたんではアカンと。
互いに腹割らんままやと一生悔いが残ると。そやから話し合うと決めて大川さんを呼び出したんやと思いますわワ。そして大川さんも同じやったんやと思います。そやから宮司さんに素直な気持ちを伝え、あの日、立ち合うて貰える様に頼んだんでしょう。あの人、宮司さんの前では借りてきた猫になりはりますから」と言うと笑顔で順子を見る林田。