第49話
文字数 788文字
ーなんやぞ。そやから、ビシッと決めてみぃ。そりゃ映えるぞぉ。恰好エエぞぉ。
そんでもってオナゴ達のウケもバツグンやがな」と酔いが回り始めた竹田が話すのを聞いていた健人が食い気味に、「そう、そうなんですか?」と尋ねると間髪入れずに酔っぱらいの竹田は、「そやがな。終わった後、オマエ、ちょっとした町の有名人やがな。モテモテやがな」と云う薄い話だったりした。
ある意味、大きくは間違ってはいないかもしれないが。概ね酔っ払いの戯言の類である。
普通なら少しは意識したとしても真に受けない。が、健人は真に受けた。シッカリ真に受けちゃったのである。
(モテるんや。そやったら樹里も見直してくれるかも・・すると、ヨリを戻せるかも)
そもそもはなから物事に真摯に取り組んでさえいれば問題は起きなかったのだが。
健人にはそこまでの思考回路が回らない。
モテる=見直してもらえてヨリを戻せる。
この単純すぎる方程式しか思い浮かばないのだ。
古来より男は女々しい動物であると云われていて、その事を女は見抜いている。
そこから引き起こされる悲喜交々の話は枚挙に遑がない。
そんな他愛のない光景が其処にも存在しただけだったのだ。
酔っ払っている竹田の戯言を単細胞生物代表の山西健人が真に受けた。
そして、その光景を居合わせた樹里が見抜いている。
悪戯好きの神様は大いに満足して笑っているのだろう。そんな事が在った二日前から今日に至っている。
(まぁ、アホはアホなりにヤル気だけは出たんやから。ここはエエとしとこう)
と樹里は考え静観することに・・恐るべし17歳の洞察力と判断力である。
兎に角、この日はそれぞれが大きな勘違いの渦の中で、それでもそれぞれが大きな満足感に満たされた日となった・・・・
イトオカシ・・。