第35話
文字数 597文字
道明寺交響曲の四回目の全体稽古が終わった翌日の会議での事だった。
発端は芳本の、「ホンマに、道明寺交響曲は大丈夫なんですか?」と云う発言からだった。
昨日の全体稽古でも通しての稽古には及ばず。深大寺創建は各場面の稽古をチェックして廻り終了しただけだった。
ただ一つ、深大寺創建から齎されたのが、道明寺交響曲のオリジナル曲の発表だった。元々企画されていたのだが、歌入のデモ音源が持ち込まれて稽古の最後に披露されたのだ。
その仕上がりは上々で。林田や竹田などは一晩で歌詞を覚えて来たらしく会議前に鼻歌交じりに口遊んで悦に入っていた。
順子としては次回の稽古で全て固まって全体像が明らかになり。そして、このオリジナル曲の完成で皆の不安や気持ちが一気に和らぎ高まってくれるものと期待していた。
それに前回三回目の全体稽古の後に順子は深大寺創建と打合せを兼ねて食事を共にし。
その折に自身の不安を伝えたうえで深大寺の思惑とプランを確認することが出来ていたのだ。
(流石は野本真弓姐さんが憧れ、私が直感で見込んだだけの人だった)
そう得心出来る話し合いだった。と同時に順子は何処かに飛んで行ってしまいそうだった自信を取り戻してもいたし。何より道明寺交響曲の成功を確信すら出来たのだった。
そう・・理論武装は出来ている。
そしてそんな万全な態勢の中での、その時がやって来たのだ。