第68話
文字数 915文字
まるでゴジラとモスラの幼虫の闘いの様なナニワ女二人の凄まじいやり取りを目の当たりにしていた順子だったが、押され気味だったゴジラ・・もとい真弓の表情が、ふと、母親の表情になった様に感じた、(樹里ちゃんの心意気は有難いし理解出来るけど、それでもここは大人として彼女に無理はさせられない。姐さんの援護射撃をしなくては)と考え、「樹里ちゃん、あなたの責任感の強さはとても嬉しいし有難いと思う。それに、あなたの言う通り。この時点で千姫の代役を任される人は、そりゃ、大変何てどころじゃないと思う。恐らく、私たちと共に不眠不休・・否、それこそ地獄を一緒に見ることになるでしょうね。でもね、だからと言って今の状態の樹里ちゃんに無理をさせることは、やはり、私も出来ないと思う。多分、お母さんも同じ考えだと思うんだけど。今、樹里ちゃんに無理をさせて怪我をした箇所を悪化させてしまったら・・樹里ちゃんのダンサーとしての未来を考えた時。やはり気持ちは有難いけど無理はさせられない」。
ゴジラ対モスラ、そして遂にキングギドラが参戦した。勝敗は誰の目にも明らかで、ゴジラにキングギドラが加担したのだから幼虫のモスラに勝ち目など全くない。とその場に居合わせた男たちは考えた。
そして敗戦が濃厚となった当の幼虫のモスラ、もとい、樹里は尊敬する順子のこの言葉を聞いて、チラッとだが真弓の表情を見た。
真弓は目をつぶり黙って腕を組んだまま仁王立ちと云った様子だ。
これで答えは出た・・と誰もが思った瞬間。
打ちのめされた幼虫のモスラの反撃が始まった。しかもその表情は強い意志を感じさせるそれだった。