第17話
文字数 1,237文字
二十歳そこそこで樹里を産んで、一年後にはダンススクール‘スタジオ・モッズ’を立ち上げて今では200人を超える生徒を抱えスタジオ経営とダンス講師として精力的に動き回っている。
その間、樹里を含めて三人も出産し育ててもいる。藤井寺ではちょっとした名物オバちゃんとして名も馳せているのだ。
だからこそ今回のまつりに対して道明寺まちづくり協議会の竹田から協力要請が来て、まつりのメインイベントである‘道明寺交響曲’に深く関わることとなっている。
そんなオカンをオトンはと云うと、「昔は可愛らしゅうて。怒っても、スペシウム光線くらいやったけど・・・最近では怒らすと宇宙戦艦ヤマトの波動砲やからな」などと言っている。
(どちらからと云えば、ゴジラが吐く熱線と云った方が、より正しく近い気がするけどな・・何せ一度発射されると何もかも吹き飛ばしてしまいはるから)と樹里は感じている。
しかし、そのバイタリティーの塊で怒らすと周囲を破壊しまくるオカンが・・今日の自主練でもそうなのだが。あの深大寺創建さんとの初顔合わせがあった日以来、妙に機嫌が良くて。
しかも何となく女子力がUPした感じがする。何といっても普段、ほとんどノーメイクでジャージ姿だった見た目も変化し。メイクはもちのロンだが、ファッションにも気を使いだしたから不思議を通り越して不気味だとさえ思える。
そんなオカンの変化にオトンを始め、生徒の父兄さんたち。それに樹里も含めた生徒たちの間でも、何かの災害の前触れかもしれないと戦々恐々の想いに包まれて、得体の知れない緊張感が漂っているのだ。特に、スタジオ・モッズに小学生の頃から通っている健人などは、オカンの前に立つと右腕と右足が同時に動いて奇妙な振る舞いになっている。
(情けないなぁ・・あれじゃ、ウチと付き合ってますなんて口が裂けても言えんやろなぁ・・)と樹里は感じている。
(オトンと云い健人と云い・・ウチの周りにいる男どもは揃いも揃って良く言えば優しい。悪く言えば気の弱い草食動物系男子ばかりやなぁ・・)
しかし、ダンサーの世界における女性陣は強烈な個性の持ち主が多いのも事実で。実はそんな樹里だってゴジラ予備軍・・チビゴジラ(ミニラ)だったりするのだが、本人は全く自覚がない。
ある意味、それが一番怖かったりする。
そもそもそんな樹里はと云うと。本人は至って穏やかな性格で、寧ろ男に尽くすタイプだと固く信じている節がある。見た目だってアイドル級とは言わないが。まぁまぁ可愛らしくて、小・中学校時代から今日まで男子たちにチヤホヤされてきたと自負さえしている。
それに、幼いころから母親・真弓にダンスを教え込まれて来たことから、ダンサーとしてのパフォーマンス・スキルは確かで、あちらこちらからダンスユニットのお誘いが絶えることがない。
事実、現在も三つものユニットを掛け持ちしている売れっ子だったりする。