運命のとき⑹
文字数 690文字
気づけば、草むらにいた。
道路から転げ落ちたのか、私は海の腕の中で、しっかりと抱きしめられていた。
……生き……てる。
上から、チョコが吠え続けているのが響く。
そういえば、さっきパパに名前を呼ばれた……。
そんなの嫌っ!
すり傷だらけの体で、夢中で土手を駆け上がった。
前にも見た、この光景を────。
あたり一面は血の海と化していた。
かすかに、私を呼ぶ声を聞きとった。
ガクガクと弱々しく、私に向けられた手を、私はぎゅっと力強く握りしめた。
いつから、私だって気づいてたの?