死神?

文字数 925文字

……あはは。なんで、涙が……。
はあー、

しょうがないな。人は遅かれ早かれ死ぬんだって。俺たちの場合、それがちょっと早かっただけ。

なにそれ!

ぜんぜんっ、なぐさめの言葉に聞こえないんですけど!

は?


これでも気遣ってやってんだよ。もう死んじまったんだし、お化けライフ、エンジョイしろって。

……あなたは、すぐ受け入れられた?
……いや、俺も同じだった。おまえの気持ち、わかるし、今までにも()()()見てきた。
ねぇ、
ん?
恋ってどんな感じなの?
…………。
ドキドキとか、ワクワクとか、そういうの経験してみたかったなぁって。私にはもう(えん)のない話だけど。
俺の経験上、
…………!
恋をするってのはさ、相手を思いやったり、この人を大切にしたいって思う瞬間なんだと思う。
なんか、大人ぁ。
そっ、大人ですから。さらに言えば、キスしたいって体が勝手に反応しちゃうとか、かな。
えっ……。
顔真っ赤。ガキだな、ガキ。

キ、キ、キ、キスとか、私にはまだ早いから……っ!

そうそう、さっき、自分にはもう縁のない話だって言ってたけど、そうでもないぜ。
え?
お化けになったって感情はあるんだし、これからそういった相手見つけりゃいいじゃん。
あのさ、…………夢……だったらいいのに……っ!
 今までのこと、全部…………っ!
…………。
……死ぬってわかってたら、もっと素直になれた!
…………。
これ、全部悪い夢だよね? 私、ホントに死んじゃったの?
……死────。

そう、おまえは死んだんだ。

え?

 目をぱちくりさせ、きょろきょろと見回す。

 まわりは見物人たちで、ざわざわとしていた。

どうした?
……なんか今、声が聞こえたような……。
声? 聞こえなかったけど。


 ……気のせい?



 そんななか、一匹の猫が人込みをすり抜けて、ゆっくりと歩いてくる。


あっ!


 ……あの猫っ!


 私がさっき追いかけてた猫だっ!



 まさか、あの猫がしゃべったわけじゃないよね?

 ないない、猫がしゃべるわけないって。


“猫がしゃべるわけない?”

おまえ、今、そう思っただろ?

えっ!?



 猫が……、


 しゃべった…………。


オレは死神。名はない。

美濃(みの)初樹(はつき)、おまえは死んだ。

は……。


やっぱり、この猫がしゃべったんだよね……?

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登場人物紹介

美濃初樹

カイ

死神

ミナミさん

沙織

十一歳の初樹

沙織

【現在】

西園寺晶

初樹のお母さん

初樹のお父さん

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