2人の初樹⑵

文字数 1,104文字

お姉ちゃん、首飾りつくろう!
うわぁー、シロツメクサだ。よくここでつくったっけ。
そうなんだ。ママに首飾りを作ってあげたら、よろこんでくれるかな?
うん、きっと……、絶対よろこんでくれるよ!


 そう、ママはよろこんでくれた。


『初樹、ありがとう』
『ホントはそれ、首飾りだったの』
『見て。ほら、プリンセスのティアラみたいで、素敵じゃない』
『ホント?』


 ママのサイズじゃ小さかった首飾りを、プリンセスのティアラみたいだって言ってよろこんでくれた。



 このまま……、


 このまま、時が止まってしまえばいいのに──────。



お姉ちゃんは作らないの?
え? あ、私? 昔はよく作ってたんだけどなぁ……。
じゃ、初樹が教えてあげようか? すごく簡単だよ。
え、ホント?
うん。じゃ、見ててね。ここに4本のお花があるでしょ。これをね、束ねていくの。1本ずつぐるっと。ほら、こんな感じ。あとはこれの繰り返しで……。


 意外と体は覚えてるもんだ。


……でき……た……!
……お姉ちゃん、すご────いっ!
えっ、お姉ちゃんも“初樹”っていうの? 漢字もいっしょだなんて、すごい偶然!
う、うん。そうだね……。
 5年後のあなたなんですけど……とは言えない。
ねぇ、初樹ちゃんて、お友達に“はっちゃん”って呼ばれてるでしょ?
えっ、なんで知ってるの?
なんでだろう。って、私も“はっちゃん”って呼ばれてたからだよ。
わぁー、あだ名までいっしょだぁ!
だね♡
ワン。
 チョコがちょこちょこと駆けてくると、私の腕の中にポンと飛び込んできた。
わっ、びっくりした……!
おかしいなぁ、いつもなら()()飛びつくはずなのに……。
えっ……。
 チョコ、やっぱり私だって気づいてるんだ!
チョコってね、警戒心が強いのか、人にあまりなつかないんだ。
……そ、そうなの?
 知ってる。

 ママが『ごはんあげてるの私なのに、なんで?』って、よくぼやいてたし!

うん。だから、こうやって腕の中でおとなしくしてるの、すごくめずらしいの。お姉ちゃんのこと、すっかり気に入っちゃったみたいだね。()()()()()()()()()といっしょだ。


 え?


バイクの、お兄ちゃん?
うん、ここでよく寝てる人。チョコね、そのお兄ちゃんのこと大好きなんだよ。お兄ちゃんのおなかの上で、いつも気持ち良さそうに転がってるもん。
転がって、る?


 誰?


そういえば最近、お兄ちゃんに会ってないなぁ……。勉強が大変なのかな? ね、チョコ、さびしいね。


 ホントに誰!?

 全く記憶がないんですけどっ!
 チョコになついていた超レア人物なら、絶対忘れるはずないんだけどなぁ……。

 

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登場人物紹介

美濃初樹

カイ

死神

ミナミさん

沙織

十一歳の初樹

沙織

【現在】

西園寺晶

初樹のお母さん

初樹のお父さん

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