運命のとき⑷
文字数 980文字
“せっかく人生をやり直してるんだ。同じことの繰り返しじゃ、つまらないだろ?“
“父親ではなく、自分が死ねばよかったと、ずっと思ってきたんだろ?”
“だからオレはおまえの心を救ってやろうっていうのさ。本来あるべき形に正すために”
“そう、本来たどるべき道へ。そうすることによって、失ったものを、失わずに済むのさ”
死にたくない!
まだママに伝えてない!
ようやく正気に戻り、目の前に迫っている危機に足元がふらつく。
海が土手を駆け上り、道路に飛び出す。
車が目の前に迫る寸前のところで、11歳の私を力強く引き寄せた。
ゴォ─────……!
車はスピードを緩めることなく、私たちの前を通過していく。
……生き……てる……。
海の腕の中で、気を失っている11歳の私。
私、死なずに済んだんだ。
過去を変えることができたんだ。
なんだろう、嫌な予感がする。
本当に終わったんだよね?
5分なんかとうに過ぎてるし、名無しさん、なにか言ってきてもよくない?
パパが愛おしそうに、11歳の私の頭をなでる。
……えっ!?
前髪と前髪の隙間からチラリと。
死から免 れたはずなのに、まだ印がついてる!
まだ、終わって……ない……?
《……クククッ。“助かった”と“思ったろ?》
頭の中で、名無しさんの声が響く。
《残念だったな。前だったら、父親の死と引き換えにその黒星は消えたんだが、今回は誰も死ななかったからな、くっきり付いてるぜ、おまえの額にも》
私にも……!?
《そりゃそうだろ。そのガキは、おまえなんだから。結局、おまえは死ぬ運命だったってわけさ。その黒星からは誰も逃げられない。消えるまで、延々と繰り返す。時間も、その度リセットされてな。さあ2ラウンド目の突入だ。オレをせいぜい楽しませてくれよ。クククッ……》