運命のとき⑶

文字数 664文字

 5分後に死ぬ───。



 黒猫なんか、追いかけるんじゃなかった!


まって、はっちゃん! そっち、行っちゃ────……!
 ぐいっと、地面から伸びてきた青白い手に足を()らわれる。
……きゃあっ!
初───……、わっ……!
こ、これは……っ!
《……クククッ! どうだ、これは悪霊化した者たちの魂だ》
 海もパパも、青白い手によって身動きがとれないでいた。

 チョコだけが、パパの腕からするりと飛び降りると、11歳の私の後を追いかける。

ワンワンワンッ!


 チョコ! お願いっ!


……行カナキャ。
ワンワンワン!
《……クッ。また犬か。おまえには少しの間、大人しくしてもらおうか……》
…………。
 チョコが11歳の私に追いついた途端、バタッとその場に倒れる。

 それと同時に、まとわりついていた無数の青白い手がスッと消えていく。

チョ……!
 まさか、死───……。
……大丈夫。気持ちよさそうに眠っているよ。
……よかった。
今のはいったい……、幻覚だったのか?
え……と……、その…………。あ、はっちゃん……っ!
 リン、リン、リン……。
……行カナキャ。
初樹……っ!
 道路の真ん中で、待ちわびる名無しさん。

……行カナ……キャ……。

 11歳の私が、フラッと道路に飛び出ると────、
《……クククッ! どうやら、俺の勝ちのようだな。あばよ》
 名無しさんがスッと姿を消した途端、それまで鳴り響いていた鈴の音がぴたりと止んだ。




 ゴォ─────!



初樹……っ!
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登場人物紹介

美濃初樹

カイ

死神

ミナミさん

沙織

十一歳の初樹

沙織

【現在】

西園寺晶

初樹のお母さん

初樹のお父さん

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