記憶を取り戻すために⑵
文字数 919文字
……ここは──────。
ゆっくりと目を開けると、いつの間にか私は、人込みのなかにポツンと立っていた。
さっきまで、ビルの屋上にいたはずなのに……。
ゆっくりと目を開けると、いつの間にか私は、人込みのなかにポツンと立っていた。
さっきまで、ビルの屋上にいたはずなのに……。
《……クククッ》
突然、頭の中で不気味に笑う声が響く。
……この声っ!
《夢ときたか。おもしろいこと言うじゃないか。どうだ、生き返った感想は?》
生き、返った?
そうだ!
私、名無しさんににチャンスをもらって……!
そうだ!
私、名無しさんににチャンスをもらって……!
自分のほっぺたをムギュッとつねってみる。
見えて、る……。
見えてるっ!
見えてるっ!!
《おい、よろこぶのはまだ早い。おまえには、これから選択権を与える》
そういえば、“自分が進むべき道”って言ってたわよね。
私の進むべき道、もう決まってるわ。
私の進むべき道、もう決まってるわ。
《なら、選べばいいだけのことさ》
言われなくても、そうするし!
で、どうすればいいの?
で、どうすればいいの?
《なに簡単さ。おまえは、このあとオレを見つける。覚えてるだろ、ついさっきまでのことを。そして、その後はおまえ自身がどうしたいのかを選ぶんだ》
だから私は、ママと西園寺さんに…………!
《おまえはこのあと、なにが起こるのか知っている》
《このあと、なにが起こるのか知っているだろ?》
そうよ、このあと、私は黒猫を追いかけて横断歩道へ…………!
《クククッ。そうだ。じきに、おまえはオレを見つける。あのとき、おまえはあきらめて帰ろうとした。そう、その道を選んでいたら────、わかるだろ? おまえは死なずにすんだのさ。ここで、おまえには選ぶ道、“選択権”を与えよう。オレを追いかけるか、否か…………》