パパとの時間⑵
文字数 969文字
え?
いくら平静を
もし、ここで「初樹だよ」って言ったら、パパは信じてくれるんじゃ……。
父が死んで、ちょうど今日で5年になるんです。おととい、母から再婚相手を紹介されました。人柄の良さそうな人で、文句のつけようがありませんでした。でも私、逃げちゃったんです。いつか、ママに特別な人ができたら、笑って祝福してあげようって、ずっと決めていたのに……。
忘れちゃうかもしれないんだよ、パパのこと。パパからママを奪っちゃうかもしれないんだよ、その人────! 悪い人じゃないってわかってるんです。パパと過ごした思い出が消えていくんじゃないかって、パパのこと忘れちゃうんじゃないかって……!
パパ……!
……そうか。君のお母さんは、5年もひとりでいたんだね。女手一つでここまで君を育てるのに、人並み以上の努力と忍耐が必要だったはずだ。母親としてこれまで頑張ってきた分、彼女には幸せになってほしい。心から笑える相手と、幸せにね────。おじさんだったら、そう思うよ。
ありがとう、パパ。
私はもう大丈夫。
5年後に戻ったら、ママに「おめでとう」って言うんだ!