あの日の記憶⑵

文字数 362文字



 ────私は夢を見た。


 11歳の私を、もう一人の自分が遠くから見ているという不思議な夢を。


『チョコ』


 ブォ────ンッ!


『あっ、お兄ちゃん!』
『初樹ちゃん。おいで、チョコ』
『ワン』

 彼が、例の“バイクのお兄ちゃん”なのだろう。

 顔がぼんやりとしてはっきりと見えない。


『初樹、そろそろ帰ろう』
『うん。それじゃ、またね、お兄ちゃん』
『うん』


 リン、リン、リン……。


『……え?』


 リン、リン、リン……。


 鈴の音とともに現れた、黒い猫。
『あっ、猫。あっ、まって……!』
『初樹ちゃん?』
 猫に導かれるようにして、駆け出した瞬間────。



 プップ────ッ‼


『初樹……っ!』
『ワンワンワンワン……ッ!』
……うーん、……パ……パ……。
初樹……ちゃん。
……パパ……ッ!
……え?

あのー、洋服の裾、思いっきり(つか)んでるんですけど……。

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登場人物紹介

美濃初樹

カイ

死神

ミナミさん

沙織

十一歳の初樹

沙織

【現在】

西園寺晶

初樹のお母さん

初樹のお父さん

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