記憶を取り戻すために⑴
文字数 647文字
死神をむぎゅっと抱きしめた。
カイと、これで本当にお別れなんだ……。
何も考えずに────────。
私は息を吐きながらゆっくりと目を閉じる。
すると、さっきと同じように、おでこが温かくなるのを感じた。
《今から、3つ数える。オレが3つ数えるまで、絶対に目を開けるな。おまえを今から10分前に戻してやる。おまえは人込みのなかでオレを見つける。あとは、おまえがどうしたいかを選ぶんだ》
死神の声が、頭の中で響く。
え?
《言っただろう。なにも考えるなって。おまえは、心の中を空っぽにして、ただ目を閉じていればいいんだ》
心を空っぽに……?
《そうだ。よし、いくぞ。1、2、3────……》