黒猫を追いかけて⑴

文字数 1,157文字

はあー、どうしよう……。
あ、猫……!
あっ、まって!
すみません、前へ通してください……!
……わっ!
……きゃっ!
ご、ごめんなさい、大丈夫っ!?
いたた……。はい、前を見てなくてすみませんでした。

 尻もちをついた私に、心配そうに手を差し伸べるきれいなお姉さん。

 もう一方の手には大きな花束を抱えていた。

これからは気を付けてね。
は、はいっ!
あの猫、どこ行っちゃったんだろう。
 足を止めて、ぐるりと辺りを見回す。

 たくさんの人が、私の前を通り過ぎる。

 まるで、スローモーションのように、行き来する人たちの会話がおもしろいほど耳に流れてくる。

……しかたないか。

 あきらめて帰ろうとしたそのとき、あの黒猫が人込(ひとご)みに(まぎ)れて横断歩道を渡っていた。

まっ、


  まって!

 私はばっと駆け出すと、それに気づいた猫が小走りする。
ちょっ……!


 プップッ──────!



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登場人物紹介

美濃初樹

カイ

死神

ミナミさん

沙織

十一歳の初樹

沙織

【現在】

西園寺晶

初樹のお母さん

初樹のお父さん

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