あの日の記憶⑴

文字数 480文字

(足音立てないように……っと)
おかえり。
か、海……。もう起きてたの? 日曜日なのに、早いわね……。
こんな時間までバイト?
えっ……、まー、そんなところ……。こんな朝早くから起きて、どこか出かけるつもり?
沙織ちゃんち。
えっ、なんで?
電話に全然出てくんないから、家に直接行こうかと思って。
や、やめなさいよ。ほら、直接行くって……、突然来られるのもどうなんだろう……って……。
でも、きのうのこと誤解したまま、怒ってるだろうし。今後のことも、きちんとしておきたいし……。
今後のことって……、まさかヨリを戻すつもり?
なんだかんだ言って、やっぱり沙織ちゃんなんだよね、俺。じゃ、行ってきます!
い、いってらっしゃい……。


 海、ごめーん……。


『今だけ、“(みなと)”って呼んで』 
『港さん、好き……っ!』
 あの子は魔性の女ね。

 私の“港”の部分を呼び覚ましちゃうなんて。


 海が夢中になるの、わかる気がするわ。


失礼しまーす。初樹ちゃん、まだ寝てるかな? 顔パックを取りに、ちょっとだけ入るね────……って。
……うーん……。
うなされてるとか、いったい、なんなのよ、この子……。
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登場人物紹介

美濃初樹

カイ

死神

ミナミさん

沙織

十一歳の初樹

沙織

【現在】

西園寺晶

初樹のお母さん

初樹のお父さん

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