パパの声
文字数 555文字
７月10日、午前８時10分。
……あれ、電源が入らない。充電切れ？ そんなに使った覚えないんだけどなぁ。
ま、いっか。
あとでメールいれておこうっと。
お待たせー。電話した？
あ、なんか、充電切れっぽいから、このまま家に帰るし、いいかと思って。
はあ？ なにが大丈夫なんだよ？ 心配してんだろ、親御さん。服に着替えてる間、電話しとけって言ったのに、おまえ今までここで何してたんだよ？
え……？
人んちのソファーでくつろいでんじゃねーし。
あはは……。
わかったよ、もう……。
ツルルルル……。
────はい……。
ガチャンッ！
……なに、今の…………。
間違えた、だけだよね……？
どうした？
えーと……、番号間違えちゃった、みたいな……？
はあ？ 自分ちの番号、ふつう間違えるかよ？
ははは……、だよね……。
ツルルルル……。
────はい、美濃ですが……。
……やっべぇ、電話きちまったよ！
もしもし……。
……え……と…………。
もしもし、美濃ですが……。
────パパだ！
まさか……、
『オレなら、おまえを５年前につれていってやれるぜ』
私、５年前に来ちゃったの？
もしもし。ごめん、沙織ちゃん。今、家出るとこ。
