未来が変わった?⑷

文字数 1,075文字

さ、沙織ちゃん、まってよっ!
もう無理っ! サヨウナラッ!
…………。
あーらら~、私知らな~い。
えっ……。
髪乾かしに行こっと♡
 ルンルンと弾みながら、階段を上っていく。



 え……、私は?


 残されても困るんですけど……!


……おまえ、帰ったんじゃなかったの?
帰ったんだけど……、その……、いろいろと事情がありまして…………。
事情? おまえの事情なんてどうでもいいけど。
それより、どうしてくれんだよ! やっとヨリを戻せそうだったのに……っ!
ご、ごめ…………。
あー、もういいわ。もう寝る。
……はぁ、もうサイアク……。
《クククッ。気にすることはないさ。もう修復不可能。アイツがどんなに頑張っても、結果は同じさ》


 修復不可能?

 彼女、誤解したままだし、2人を仲直りさせるにはどうしたらいいんだろう。


《おまえが余計な行動すればするほど、2人の仲はこじれるだけさ。これでいいのさ、あの男はあの“ガミガミ女”と別れて正解。おかげで死なずにすむんだからな。》
え?
 カイは死なないってこと!?
《ああ、そうさ。未来は書き換えられた。過去の人間とあまりかかわるなって言ったのに、始末書を書くはめになったじゃないか。》
へぇー、始末書なんてあるんだ。そっか、死なずにすむんだ! よかった……。
《そういえば、バイク野郎が現世に思い残したことがなんだったのか、おまえ知りたがってたよな?》
 ……名無しさんは、知ってたの?
《ああ、知ってたさ。忘れたか、オレは人の記憶をのぞくことが出来るってことを》
 知っていたのなら、なぜ教えてあげなかったの?
 カイはそれを見つけるために、現世をさまよってたんだよね?

《仕方ないさ、オレにだって死神の(おきて)がある。守秘義務ってやつだよ。オレが奴の記憶をのぞいたときは、まだ意識があったときだった。事故のショックか、肉体から抜け出したあとの奴には記憶が残ってなかった。唯一覚えていたのは、“カイ”という名前だけ───》

 記憶がなかったなんて知らなかった。

 カイが探していたものって、いったいなんだったの?

《2年後の2x06年7月9日の正午、奴はあの女と駅で待ち合わせしてたのさ。が、()()()()に寝坊しちまったアイツは、バイクを猛スピードで走らせ、黄色から赤に変わろうとする信号を突っ走り、横からきたトラックと衝突。スピードを出しすぎた原因は、家を出る前に彼女からかかってきた電話で、彼女の機嫌が悪かったからだろう。でも、これはもう来ることのない未来。今さら語っても仕方のないことさ》
“大事な日”って、なんだったの?
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登場人物紹介

美濃初樹

カイ

死神

ミナミさん

沙織

十一歳の初樹

沙織

【現在】

西園寺晶

初樹のお母さん

初樹のお父さん

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