ミナミさんの秘密⑶

文字数 610文字

ごめんね、初樹ちゃん。今まで黙ってて。でも、心と体はしっかり女だから……。
戸籍上はまだ“男”だろ。
なんでそう水を差すようなこと、言うかなぁ?
は、はじめは確かに驚きましたけど、やっぱりミナミさんは素敵なお姉さんです。
ホント、初樹ちゃん? ああ、大好き♡
 ミナミさんがギュッと抱きつく。


 ミナミさん、む、胸が……。


だから、いちいち抱きつくなって!
うらやましいでしょ、海♡
はあ?
あっ!

やっべぇー、遅刻だっ!


 ミ、ミナミさん、声が…………。


くそっ、間に合わねぇ。海、バイク借りっぞ────っ!


 ()になってますよ!


……ふっ……!
まだ全然、男を脱ぎ切れてないじゃんか。
 ミナミさんの部屋で、またもや見つけてしまった。カレンダーに付けられた、印を。


 でも、ミナミさんにとっての7月9日は……。


本人(いわ)く、もうひとつの誕生日らしい。
え?
“女”になった日ってこと。
ああ、なるほど!


 ごく普通の大学生だった、(みなと)さんこと“ミナミさん”が、ある日、突然、女の人の姿になって目の前に現れたんだとか。

 空手の道に進むと思っていたお父さんはショックのあまり寝込み、女の子が欲しかったお母さんは大喜び。


 3年前の7月9日は、ミナミさんが女性に生まれ変わった日だった。



 あのキレのある()りは、空手の有段者だったのね。


いらっしゃいませ!
あっ!
こんな夜更けに爆食いなんて、美容に悪いわよ。


 未来が変わっていく────……。


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登場人物紹介

美濃初樹

カイ

死神

ミナミさん

沙織

十一歳の初樹

沙織

【現在】

西園寺晶

初樹のお母さん

初樹のお父さん

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