チャンス?⑵

文字数 515文字

────わかった、話そう。

おまえは、運が悪かっただけだ。確かにオレは死神で、ときには人を死に誘うこともする。だが、オレの姿が見えるのは、オレまたは死神が目星(めぼし)をつけた奴だけ。

目星?
つまり、普通の人間には“オレ”は見えないってことさ。
まって!

私には見えていたし、やっぱり、あなたが私を殺したんじゃない。なにが運が悪かったよ?

違う。オレの話を最後まで聞け。
……わかったわよ。じゃ、続きをどうぞ。
おまえは死ぬはずではなかった。
え?
 死ぬ……はずではなかった?
そう、問題なのは、なぜ見えていたかだ。のないおまえが、なぜオレが見えたのか……。
印? 印って?
ふ~む。
 死神は私の顔をじろじろと見ながら、ぐるりと私のまわりを一周する。 
ちょ……、なんなのっ?
おまえ、どこかで見たことあるような……。
どこかでって、どこでよ?
さあ、それを今考えてるんだ。

 今度は鼻をクンクンと鳴らして()ぎ回る。

いったい、なんなの?
しかたない。オレの額に顔を近づけてみろ!
へっ?
ほら、早くしろっ!
わ、わかったわよ!

 

 ────あ……れ……?



 それは、ほんの一瞬だった。
 おでこがポッと温かくなるとすぐに、死神の息がふっと顔にかかる。


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登場人物紹介

美濃初樹

カイ

死神

ミナミさん

沙織

十一歳の初樹

沙織

【現在】

西園寺晶

初樹のお母さん

初樹のお父さん

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