チャンス?⑶

文字数 874文字

────なんだ、そういうことか!
……そういうこと?
クククッ。なんだなんだ、こりゃ面白いことになったぞ!
ちょっと、わかったなら、さっさと説明しなさいよ!
クククッ。おまえ、あのときの子供だな。()()()()()()────。
は?

 命拾い?

道理で、オレの姿が見えるわけだ。あのとき、オレが黒星(くろぼし)をつけたガキか。クククッ。
……黒星?
そう、“黒星とは死神が自分の狙った“獲物”につける()のことさ。
獲物?
クククッ。4年……、いや、そろそろ5年になるのか。()()()に死んだのは。
……代わり? 代わりって、どういうこと?
あの日、オレが目星をつけたのは“おまえ”だ。つまり、あの日、死ぬのはおまえだったんだ。

私が……、死ぬ……はずだった?

そう、本来ならおまえが死ぬはずだったんだ。父親の死と引き換えに、おまえにつけた印は消えたが、ごく(まれ)に死神を見る力が身についちまう奴がいる。それが、おまえだ。
だから、私に死神が見えた……。
 だけど、パパが死んだのは私の……せいって…………!
クククッ。嘘じゃないさ。
【5年前】
『は、初樹っ!?』
『マ、ママ……』
『初樹、よかった……!』
『……パパは?』
『パパは……、パパはね……!』


 あの日、パパといっしょに散歩してて……。


 気づいたときには、病院のベッドの上だった。

 私は3日間眠っていたらしく、ママが泣きながら私を抱きしめてくれた。


『……初樹……っ‼』
 あの日をどんなに思い出そうとしても、(もや)がかかったかのようにその先が見えなくて、もがいても、もがいても、その先は一向に見えなかった。
 思い出そうとすると、靄の中から黒い影が伸びてきて……!


 ────怖い……っ!

 
 何度も、何度も、あの黒い影に飲み込まれそうになった。
 どんなに逃げても、その黒い影は追いかけてきて…………!


……ハツキ、大丈夫かっ!?
う、うん……。


 あの日を思い出そうとすると、いつもそう。


 私の代わりって……、

 私の代わりって、どういうこと?


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登場人物紹介

美濃初樹

カイ

死神

ミナミさん

沙織

十一歳の初樹

沙織

【現在】

西園寺晶

初樹のお母さん

初樹のお父さん

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