2人の初樹⑶

文字数 708文字

初樹、そろそろ帰ろう。
え~、初樹、お姉ちゃんとまだ一緒にいたいよぉ。
ダメだよ。ママがお昼ご飯、用意してくれてるから。
……う~ん、わかった。お姉ちゃん、また会える?
え? あ、うん。また遊ぼう!
ホント!? じゃ、約束だよ。
うん。やくそく~。


 過去の自分とパパを見送る──────、
 そんな不思議な体験をするなんて思ってもみなかった。
 まるで、テレビドラマによくある回想シーンを、目の前で見ている気分。

……パパ……。


 大好きだった、パパが目の前にいた。

 しかも、すぐ手の届くところに…………。



 ぐるるる……。


ヤバイ、おなか空いた……。
 てか私、非常にヤバイ状況じゃない?


 家に帰りたくても、ここ5年前の世界だし。

そういえば、名無しさん。

名無しさーん、名無しさーん。


 え……、無視……?


 パパにも、チョコにも会えたから、もう帰ってもいいんだけどな……。



名無しさーんっ!
5年前に連れてきてくれたのはいいけど、こんなところに一人取り残されても困るんですけどぉ!
“実は私、5年後のあなたたちの娘です”って、誰が信じるかっての! 頭がおかしいって思われちゃう。だぁあ、あの名無し野郎、覚えてろよな……。
 ここは(いち)(ばち)か。

 今の私が頼れるところは、ここしかない! 

あー、どうしよう。本当に来ちゃったよ。どうしよう……、でも、私にはここしか……。
ちょっと、いつになったらピンポン押すのよ! じれったくて、もう見てらんないわよっ!


 え?


あら、あなた! (かい)が連れてきた子じゃない。もう、こんなところに突っ立ってないで、入った入った♡
えっ? あ、あのぅ……。
あ……、私? 姉のミナミで~す。よろしくね♡
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登場人物紹介

美濃初樹

カイ

死神

ミナミさん

沙織

十一歳の初樹

沙織

【現在】

西園寺晶

初樹のお母さん

初樹のお父さん

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