バイクのお兄ちゃん⑴
文字数 1,006文字
ワン。
チョコ、久しぶりだな。元気だったか？
チョコがなついてた“バイクのお兄ちゃん”って────！
…………カイ。
なんで覚えてないの？
……あれ、ハツキじゃん。なんでいんの？
あ、朝の散歩……。
わあ、チョコ、うれしそう。やっぱりチョコは、お兄ちゃんのこと好きなんだね♡
カイの腕の中で大人しくしているチョコ。
今、私の目に映っているのは、忘れてしまった記憶の一部分なのだろう……。
今、私の目に映っているのは、忘れてしまった記憶の一部分なのだろう……。
チョコも初樹も、彼のことが好きみたいだね。
えっ？
バイクの音がすると、初樹はいつもうれしそうにニコニコするんだ。キョウダイがいないからか、“お兄ちゃん”という存在の憧れか、もしくは恋心を抱いているのか……。親としては後者の場合、複雑な心境だよ。
ま、まさか。
そんな考えすぎですっ！ はっちゃんにはまだ早すぎますって。
憧れです、絶対に憧れっ！
そうかい？ 君が言うんなら、やっぱりそうなんだろうね。
ええ、そうですともっ！ 憧れです、絶対そうです！ 間違いありませんっ！
確かに、地縛霊のカイにはときめいちゃったりしたけど……。
本来のカイは
ねえ、お兄ちゃんは何て名前なの？
俺？ 海 だよ。
……カイ、くん？ 漢字でどう書くの？
“うみ”って書くんだよ。
へぇー、そうなんだ！
確か、君は───……。
私は初樹。そこにいるお姉ちゃんと、同じ名前だよ。
…………。
漢字もいっしょなの。はじめましての“初”に、樹木の“樹”って書くの！
初樹ちゃん、か。いい名前だね。
ホント？ 初樹もお気に入りなの。ねえ、海くんって恋人いるの？
なっ！
なにを言ってるの、11歳の私！
いないよ。もうちょっと大人になったら、お兄ちゃんの彼女になる？
はい？
たらし男、なに爆弾発言しちゃってるの!?
うん♡
てか顔が真っ赤だし、過去の自分！
好きなの？ 好きなの？
……そ、そんなぁ……、初……樹ぃ…………！
パ……！
パパ？
ムンクの叫ぶ人状態になってるし。
ダ、ダメッ！
…………！
お姉ちゃんも 、海くんのこと好きなの？
ち、ちがうよ。あのね、はっちゃん。このお兄ちゃんはね、こう見えてかなりの浮気性なんだよ。
おま……！
うわき、しょう？
そう、彼女いーっぱいいるの！
いねーよっ！ 今は……。
……海くんとお姉ちゃん、仲良しなんだね！ まるで恋人みたい。
え？
ナイから、それは。
は、はあ？
