0329

文字数 2,391文字

13:30 起床
14:30 食事 プロテイン牛乳 白米300g とろろ 鶏肉と人参の煮物
17:00 フードデリバリー稼働開始
21:49 フードデリバリー稼働終了
22:22 帰宅
23:00 カレー仕込み
00:27 日記執筆開始

 二日ぶりの日記だ。昨日書けなかった理由は後述する。まずは今日の結果である。
 

3/29 

配達件数 13件
配達距離 19.16km
収入 11,061円
時給 約2,596円

 朝起きられず、結果として17時夕方から開始。22時前まで稼働して時給で言ったら2,596円くらい。この中にはウーバーで達成したクエスト報酬3,500円が含まれているから、実質的にはいつも通りといった感じだ。


 今日は非常に鳴らなかった。いつも鳴らないと言っている気がするが、まさか大久保で一件もならないとは思わなかった。これはたまらんと池袋に移動し、やっと2社ともに鳴るようになったが、ひたすら北区や板橋区に飛ばされるロングばかり。僕は理由がなければ、報酬が高くてもロングは取らないことにしている。北区や板橋区に行っても、ブーストやインセンティブが付くわけじゃないので、単価が落ちる原因になるだけだ。案件を選びつつ稼働しないと、毎日続けられない。どうせ明日もやるんだからと思いながら、ゆるーくやっているのだ。結果として4時間で1万を超える収入が得られたら満足である。

 今日は嬉しいことがあった。色街である大塚の弁当屋へピックに行ったとき、店員さんからお菓子を頂いた。僕だけじゃなく配達員全員に配っているのだろうが、こんなことは初めてだった。その前は雑司ヶ谷付近にいて、結構な移動距離だったし、ドロップ先も山手通り近くまで行くことになっていたので、前述とは180度違うことを書いているが、WOLTで間違って受けてしまったのだ。文京区大塚だと思ったら、よくよく見たら豊島区の大塚で、キャンセルしようにも結構な時間が経っていたから泣く泣く行くことにしたのだ。なので、まったくの不本意で、ピーク時にこんなロングは正直もったいないから不機嫌だった。そんな折に店員さんの温かいサービスが染みた。学校を卒業してから他人との関りがないから、それだけで思わず「こんなこと初めてです」と漏らしてしまった。そんな僕を見て、店員さんが笑ってくれたから、僕もなんか嬉しくて、照れくさくて、すぐさま「お預かりします!」と店を後にした。そんなポジティブな思いも、店を出て1分後には、上り坂の多さと大回りしないといけない池袋駅周辺の道路事情へブチギレていたのだが……しかし、久々に人の温かさに触れられて心が温まった。



 しかし、月曜日はハートブレイクした一日。誰かに何かをされたわけではなく、自分自身の弱さに嫌気が差した日だったのだ。その感情を振り切るべく、一日稼働をしてとことん体を疲れさせた。なので日記を書かなかった、書けなかった。

 理由は簡単。面接をドタキャンしてしまったのだ。土曜日に危惧していたが、日曜日に起きたのが14時だったのだ。睡眠薬を飲んでも頭がボヤっとするだけで眠れず、こんなのでまともな受け答えができるわけがない。明け方5時に先方に断りのメールを打った。考えぬいた正当性があり、不真面目で無能さを全開にした屈辱的な文をしたため、悔しさと虚しさといったネガティブな感情を噛みしめながら送信ボタンを押した。一方的に自分が悪いのだが、やりようがない自己否定を夜通し抱えていた。それを払拭すべく、フードデリバリー各社が営業を開始した瞬間に稼働を開始した。それがこの結果だ。


3/28


配達件数 29件
配達距離 37.92km
収入 18,295円
時給 1,929円

 ひたすらやってやった。朝の7時から夜の23時まで電動じゃないママチャリで、くしゃみを連発しながら、都内を駆け回っていた。結果としてはこんなもん。なんなら今日の方が稼働効率が良いまである。それでも良いのだ。僕は忘れたかったし、ポジティブになりたかったのだ。

 不運に愛された日はとことん悪い。この日の稼働も鳴らなかったし、お客さんも変な奴しかいなかった。建物名を書かない人、住所の書き方が変な人、ドライバーに箸とスプーンを多くもらってくれと言ってくる人、10m先の店に行くのもめんどくさがって頼む人(これは僕にとっては嬉しいことなのだが、なぜ頼んだのか全く分からなかった)などなど……変な人が多くて、その一つ一つが腹が立った。昨日の僕はとことん自己嫌悪をしていたのだ。しかし、お客さんにも店にもそんなことは全く関係がないから、僕は無理して愛想を振りまいた。それで疲れ果ててしまって、今日起きられなかったのかもしれない。

 僕の人生はふり幅が多い。悪いことも良いことも些細なことばかりだが、その度に僕の心は動かされる。それがあまりにも小さなことばかりな事実が、僕の器が小さいという現実を突き詰められるのだ。それが嫌なのだが、僕自身にはどうしようもない。器をでかくしたいと思っても、もう何も挑みたいことがないのだ。

 来週の火曜日にも面接が決まった。小さな出版社で漫画編集者の職だ。全くもって決まる気もしないし、決まったところで僕がイキイキと働いているイメージが沸かない。

 僕はこれからどうなるのだろうか。抗っても手にしたいことが、もう何もないのだ。どうせ明日もフードデリバリーをして、どのくらい走って、どのくらい稼いだかを書いて終わりなのだ。それがどうしようもなく悲しい。夢中になれることがほしい。それがもう、なくなっているのは分かっているのだが、何かに没頭できることが幸せなのだと最近気が付いてしまった。失ってから初めて分かることは、これから手にできないものなのだ。それらが分かってしまった今、僕はとにかく悲しい。

 とりあえず今日はここまで。おやすみ、世界。
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