0202

文字数 1,935文字

12:00 起床
12:15 書き物
13:00 食事 白米200g キャベツとピーマンの潮汁
15:00 出発
16:00 講義開始
21:00 講義終了
22:20 日記執筆開始

 物憂げな日。昨日タロット占いをしてもらったことをきっかけに、僕がライターを志したときを思い出して、ノートに書き起こした。

 6年前、僕はゲストハウスに住んでいた。そこは5階建ての雑居ビルを改装し、最大70人ほど収容できるところだった。フロアごとに個室、男女ミックス、女性専用、男性専用と別れていて、僕は男性専用のフロアで3年近く暮らしていた。

 当時の僕は何もなく、パチンコ専業として生活費をねん出していた。資金は20万もなく、パンクしたらパン工場の派遣で夜勤をして糊口をしのいでいた。もちろん単発の派遣なので毎回入れるわけでもなく、月35,000円の家賃を支払えずに待ってもらうことが何度もあった。住民税なんて払えるわけもない。30歳半ばでそんな情けない生き方をしていたのだ。それでも僕は気にしなかった。一緒に住んでいる人たちはそんな人たちばかりだったから、家賃が払えなくなるなんて珍しくもなかったのだ。

 そんな僕の心境に変化があったのは、MAX規制が入ったころだった。穴倉のホールで毎日のように期待値を追う日々。パチンコを打つ人ならうらやましいと思うかもしれない。しかし、当事者になれば、その日の投資額に不安と焦り感じ、社会復帰の諦めといったネガティブな感情を抱えているものだ。

 WライディーンのMAXを打ちながら、今後の人生について考えていた。盤面では少女がシャワーを浴びているという訳の分からない演出が起きていたと思う。技術も資格もなく、これからどうやって生きて行けば良いのだと考えていた。そういう人間がどうなるかは、ゲストハウスに大勢いたので分かっていた。

 60歳近くになって、乾麺のそばを小分けに食べるなどして生活費を落とし、低賃金の派遣やアルバイトに左右される日々を過ごす。自分と同じような状況の人は少ないが、孤独なので若い連中に絡み、なんとか相手にしてもらうと振る舞いうざがられる。逆に言えば、それで生きていけるというのもある。だが、当時の僕は恐ろしさを感じたのだ。そして、僕は思ったのだ。死ぬまで働けるのは作家しかないと。そして、僕が見てきた人間を残したいと。それを両立できるのはライターである。だからライターを志したのだ。

 僕は傲慢である。自分が優れた人間と思い、他人を見下すところがある。根拠があるわけじゃないから、本質的にそうなのだ。だから僕は人から嫌われる。それで良しとしてきた。しかし、よくよく考えたら嫌われてもいないし、避けられてもいない。なぜなら、実力もなければ中身もないことを見透かされて、失望と共に離れて行ってしまうのだ。

 実力がない傲慢は虚飾である。メッキが剥がれたら中には何もないハリボテだ。実力がある傲慢はカリスマである。揺るがない自分があり、人生の航路を決めて、困難を切り開くために努力をできる、続けられる者だ。僕はカリスマを目指さなければならないのだ。目の前のことを一つずつ片づけて、新たな挑戦と学びを続け、表現し続けなければいけなかったのだ。それをずっと怠ってしまっていた。その大きな要因は怠惰と甘え、そして自己肯定感がないからだ。

 僕は甘ったれである。自分のやりたいことだけを追い続けるのもできず、中途半端に安定を求め、すべてを捨ててまで究めることも怠っている。もっとストイックさが必要なのだ。いや、認めさせてやるという執念が必要なのだ。上っ面だけを舐めてみて全てを悟ったように思ってしまうのがいけないのだ。

 もっと真剣に見つめてみようと思う。自分が生きる道を決めたのだから、そのコンテンツの持つ核を表現することに誠実に努力することが必要なのだ。そんなことに気が付いたから、学校に言ってもそんなことを考えていた。グループワークをしたが、当然傲慢である。

 僕は傲慢である。この歳まで変わらなかったら、傲慢で生きていくしかない。そのためには、現実と自分との真剣勝負を日々繰り返さなければならない。そうしているうちに分からないことも出てくるし、力及ばないことも出てくるだろう。その時は素直に人に泣きつけるはずで、その姿を他人が見たら謙虚というのかもしれない。

 明日は休みだが、学校の課題と職務経歴書を見直すことにする。僕はMAX規制が入った時に人生を変える決意をしたが、6年間さぼり続けた。そうしているうちにCR機が消えた。もう一度、転機が来てくれたのだ。だから、一つずつ片づけていこう。現実と自分と戦っていこう。

 とりあえず今日はここまで。おやすみ、世界。
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