第57話

文字数 608文字

でも、やっぱり病を抱えているからなのか、体力は明らかに衰退しているとことを思い知らされる。
たった2~3年前ならもう少し集中してできたまずだった。

それでも今日、乗り切れたのは甥の楽しみにしていた顔がチラチラと浮かぶから。
鼓舞し日が傾きかけて来た頃になんとか納品できて、疲れてウトウトしていたところに三人が帰ってきた。

甥はほんのり、小麦色になったようだ。
なんとなく久しぶりに、子どもらしいと思ってしまった。

夕食までに間に合って良かった、地の物を堪能できるのが旅行の醍醐味だ。おまけでついて来られたバイトちゃんは写真を撮ったり、知らない食材の食べ方を部屋付きの仲居さんに尋ねたり忙しい。

知らない食材については、興味があるようで甥もその時は熱心に聞き耳を立てて言われたとおりに食べていて、なんだか微笑ましい。

その一方で美味しい食事を前にしているのに、甥はどこかまだまだ楽しくなさそうにしていた。
女将さんが言うに、私に無理させているのではと思っているのだろうとのことだ。

話題を出して、リラックスさせよう。
私が甥にきちんと向き合っていると、態度で示さなければならない。

初めての釣りのことを聞くと、エサの虫が怖かったとか取り外すときに可哀そうだと思ったとか、一生懸命に教えてくれた。

妹がすべきはずの役割を少しでも、私は取りこぼさずにできるのか。
聞きながら考える。
残された時間という枠の中で。仕事と生きることと同じくらいのチカラで。



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