第19話

文字数 496文字

そのことで妹は準備を着々と始めた。

甥が幼稚園が決まったのを期に、妹は短時間のパートを始めた。
少しずつお金を貯め始めた。

親子2人で外でやっていくのに、しばらく長い時間働けないだろうから慎ましい生活に慣れたいと言い出し、食べ物は極力質素にすると言ってきた。

せっかく私がいるときは4人で囲んでいた食卓も、その宣言を期に妹は極力甥と二人っきりで食べるようになったらしい。

母が少し寂しそうに、私と2人で食事をしてぽそりと言ったのが物悲しい。
しかし、一度言い出すとなかなか辞めないのは昔から変わっておらず母は次第に諦めたようだ。

少しずつ少しずつまた私達2人に距離ができ始めていた。

妹に若干の蓄えができ始め、甥の小学校入学を境に家を出ると妹が宣言をしたころ、母が受けていた健康診断の結果が家に送られてきた。

そこには要再検査の文字が書かれていた。
A~Eの5段階評価で、Eとつけられたのを自分も妹も初めてみた。

社長の勧めで独立も視野に入れていた当時の私は、相変わらず忙しく妹に頼み社長に紹介してもらった総合病院へと再検査へ連れて行ってもらった。

再検査の結果、母にがんが発覚した。
胃がん、ステージⅢと告げられた。

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