第43話

文字数 318文字

 その日は、主治医に言われた月に1回の診察で、定期的な検査が6回目を迎えたときのことだった。

一応言われたとおりに検査で通院し、無理しないように過ごしてきたからなのか、妹が久しぶりになにか食べたいものはあるか聞いてきた。

このところ、ずっと消化にいいものばかりを食べていたから、久しぶりにアレが食べたいというと、そう言うと思ったといって職場へと出かけて行った。

その後ろ姿はいつもどおりだった。

ただ、珍しくいつも言う「いってらっしゃい」が聞こえなかったのか、振り向きもせずに行ってしまった。

そのあと、いつものように病院に向かい、すでに頭の中は久しぶりに食べられる夕食のことでいっぱいになっていた。

空がにわかに曇ってきても、幸せだと感じていた。


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