第60話

文字数 592文字

翌朝、と言ってもダラダラとしていたせい(みなじゃなく、私だけ)で10時になってしまったが近くの岬まで続く散策路をバイトと3人でくことにした。

夕方、仕事が終わった打ち上げを兼ねて合流してくる予定の社長家族が来るまでの僅かな時間。
家族だけで海を見ながら語らえるのはこのタイミングしかない。

冬は一部凍結することもあるとかで岬の先まで行けないらしいが、今なら子供の足でも30分くらいで歩けるちょうどいい散歩道だ。

本当は二人だけで行きたかったが、万が一を考えると恐ろしくなり、バイトには同行してもらっている。

運動不足な私だけじゃなく、行きはバイトの子も軽く息が上がるのぼり傾斜で、体力おばけの小学生だけが元気そうに歩いている。

一人だけ朝食を抜いてしまったこともあり、小学生はすぐお腹が空くからついたら軽く食べたり飲んだりできるようにと、女将さんからお弁当等々をもたされているから、甥をバイトに任せて荷物のほうを担当したのだが、その坂道をすっかり忘れていたので後悔していた。

散歩好きの母がここに来るたびに何度か歩いただろうこの道は、平日の今日はすいていてすれ違う人は少ない。

私は過去に殆どここまで足を伸ばすことがなかったが、母が亡くなってすぐ後弔いを兼ねて妹と甥と3人で歩いた道は今も殆ど変わりなく、途中までは音と香りだけで海を思い浮かばせる演出をしてくれる。

この小道は母のお気に入りの道だった。

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