第20話

文字数 752文字

独立の話がすでに動き出している時期に差し掛かっていたので、こんな重要な時期だというのに、妹に母を任せっぱなしだった。

並行して受け持っていた仕事も手が離せず、代わりに社長の奥さんが手を貸してくれた。
子供の年齢も近いこともあって、妹と割と仲良くしてくれていたので、本当に頭が上がらない。

ただそれでもまだ、お金は出しているという自負もあり、最初の入院の時は甥の幼稚園のお迎えくらいはできていたので、妹も黙っていた世話をしてくれていた。

流石に、母の手術の日は仕事を入れずには過ごしたものの、結局妹と奥さんが、入院から退院までを支度をしてくれ、私はいるだけの存在で終わった。

そんな事もあってか母は、一度は生還した。
術後もしばらくは良好で、以前のような生活へと戻り始めた。

そうしてくると、安心したのか妹がまたこの家を出る話を進めだした。

同じ頃、独立したことをきっかけに私は在宅が増えた。

元々、妹が住むことは想定していなかったので2LDKのこの家の部屋は、一つは私でもう一つは母の部屋として生活していた。

妹が来てからは、その1部屋を妹たちが使い、私と母が同じ部屋を使っていた。

あえて外に事務所を設けなかったのは、妹が出ていった後のこの家に母が一人になる時間が増えることを懸念したことが大きい。

それを見越して、私は母が起きて寝るまでを自分の部屋で仕事をすることにしたのだった。
しかし、仕事がピークを迎えると妹たちが2人で食事をするようになってからというもの、私が部屋から出てこないので、母はほとんどの時間一人で過ごすことになってしまった。

育児に参加するようになっていたから、以前あった付き合いも随分と減っていての病気療養で仕事も休業していて、気遣ってか友人からの誘いもなくなっていたことに、愚かな私は気づきもしなかった。


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