第2話

文字数 254文字

数年前に母の主治医だった人はその時と同じ顔をしている。

そして彼はゆっくりと、私の方を向き、
「今日、来てもらったのは、…先日の検査で悪い数値が見つかって…。」
その後の事は、朧(おぼろ) 気( げ)であまり覚えていない。

気づけばそこはもう診察室でもなく、明るい部屋で顔見知りのケースワーカーがいて、私の手を取り、私が認識できるように主治医が言っただろう同じ言葉を伝えてきた。

その手の温かさがなかったら、このままここで溶けてなくなってしまったかもしれない。
「御家族ともう一度いらしてください。なるべく早いうちに。」

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