Scene14 暗闇から光へ…。場所は船の中の部屋。

文字数 1,211文字


  未来は一人部屋にいた。
 海里「お待たせ」
  海里がお茶を乗せたお盆を持って部屋に入って来た。海里は簡易テーブルの上にお茶を置いた。
  海里と未来は向かい合わせに座った。
 未来「ところで、海里。俺に何か用事があったのか?」
 海里「うん、未来君に夏休みの宿題でわからない所があるから教えてほしいの」
 海里はテキストを出して、わからない所のページを開いた。
 未来「あ、国語か。まあ、俺でわかることなら教えてやるよ」
 未来はそのページに目を通し始めた。
  海里は頬杖つきながら、未来の顔をじっと見つめていた。
 海里「ねえ、未来君」
 未来「何だい?」
 海里「…六歳の春頃だったかな。とてもおとなしい女の子がいたの。その子、英語は喋れたけど、日本語が少ししか喋れなくて…言葉の壁があったのね。友達ができなかったの。でも、ある男の子が一緒に遊んでくれたの」
 未来「…それで、その二人はどうなったんだい?」
 海里「その女の子は初めて友達ができて喜んでいた。でも、半年くらいだったかな。その女の子は引っ越しにすることになったの。その男の子をさよならすることがいやで泣いていた。それで、その男の子はぬいぐるみをプレゼントしてくれたの。そのぬいぐるみは今も大切にされていて、その女の子のそばにいるの」
  海里が座っている隣にはスヌーピー君と呼ばれるぬいぐるみが置いてあった。
 未来「その女の子は、今は、おとなしいどころか、お転婆になりました。冗談を言っては人を笑わせています」
 海里「…えっ?」
 未来「そして、その男の子は、今、その女の子と一緒に宿題をしています。その前に一言、言わなければなりません」
 海里「み、未来君?」
 未来「海ちゃん、おかえりなさい。とね」
 海里「た、ただいま。みーくん」
 未来「やっぱり海ちゃんだったんだね」
 海里「未来君…どこでわたしだってわかったの?」
 未来「スヌーピー君。俺が女の子に初めてプレゼントしたものだから…。大切に持ててくれたんだね」
 海里「うん、寝る時はいつも一緒なの。…でも、わたしも君がみーくんということにやっと気が付いたのよ」
 未来「じゃあ、海里。お前はどこで俺だということに気が付いたんだ?」
 海里「君と初めて喧嘩した時。あの時ははっきりではなかったのだけど、今日、君の顔を見ているうちにね」
 未来「…でも、驚いたよ。また会えるなんて」
 海里「わたしも」
 部屋のドアがガラッと開いた。二人はギクッとなった。海斗と伊都子が入って来た。
 海斗「あっ、お姉ちゃんたち、ずるい。先に夏休みの宿題を始めている」
 海里「海斗、わたしは国語が苦手だから、未来君に教えて貰っているの」
 伊都子「でも、どうして未来君なの?さては、いいことしていたの?」
 海里&未来「そんなんじゃないって…」
 海里と未来は顔が赤くなっていた。
 伊都子「ははん、国語ねえ…。まあ、そういうことにしてあげるね」
 光から暗闇へ…。



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