Scene8 暗闇から光に戻った。場所は、競馬場の外側。

文字数 1,497文字


  瑞希先生は、海里と海斗をキッと睨みつけて、海里の左の頬を引っ叩き、海斗の左の頬を引っ叩いた。
 海里&海斗「瑞希先生…」
  海里と海斗は叩かれた左の頬に手を当てた。
 瑞希先生「あなたたちは何をしているのですか。先生は、あなたたちのことを、どんだけ心配したか…」
  瑞希先生は海里や海斗よりも痛そうな顔をしていた。…涙を零していた。
 海里&海斗「瑞希先生、ごめんなさい…」
 海里は涙を零して、海斗も涙を零していた。瑞希先生は、そんな二人を抱き寄せた。
 瑞希先生「わかればいいのですよ。あなたたちは、わたしの大事な生徒なのだからね」
 海斗「瑞希先生、僕がお姉ちゃんを連れて来たのです。僕が悪いのです」
 海里「ううん、わたしが悪いの。海斗に、ママに会うのに旅費がいるって言ったから…」
 瑞希先生「君たちはいい姉弟なのだね。お互い思いやっているのだね…」
  瑞希先生は、海里と海斗の背中をポンポンと優しく叩いた。
 瑞希先生「じゃあ、君たち、これからわたしの家に行こうか。お腹すいたでしょう。ごちそうするよ」
  瑞希先生は、海里と海斗を目の前に置いて、そう言った。
 海里「でも、瑞希先生。学校は大丈夫ですか?」
 瑞希先生「…って、もう学校は夏休みですよ」
 海里「あっ、それもそうか」
 瑞希先生「海斗君、家に行く前に、わたしは少し海里さんとお話があるから、万馬券を交換してきなよ」
 海斗「瑞希先生、いいの?」
 瑞希先生「ママに会うための大事なお金なのでしょ。その代わり、このことは三人の秘密にしましょうね」
 未来「瑞希先生、ごめん。三人だけの秘密じゃなくなってしまったよ」
 恭平「すみません、俺たち聞いてしまいました」
  未来と恭平は、近くの木の陰から姿を現した。
 瑞希先生「あなたたち、いつからいたの?」
 未来「瑞希先生が、海里と海斗を引っ張ってここに連れて来たところから」
 恭平「海里と海斗が心配だから、瑞希先生の跡を追って、ここに来ました」
 瑞希先生「先生がこんなことを言ったら駄目だと思うけど…。いいえ、このことは、先生としてではなく、わたしとして、この子たちの力になりたい。だから…協力をお願いします」
 未来「瑞希先生、俺は最初っから、そのつもりだったよ」
 恭平「未来、お前…」
 未来「恭平、俺とお前の仲じゃないか。遠慮しなくていいんだぜ。…それに、この子のこと、ほっとけないしな」
 恭平「お前、この子に惚れたな。…でも、未来、ありがとう」
 海里「未来君、いい人だね。喧嘩ばかりしてごめんね。本当にありがとう…」
  海里は、また涙を零した。
 未来「おい、急に何しおらしくなってんだよ。それに、俺は女の子の涙に弱いんだ…。それって、お前らしくないぞ」
 海里「それもそうね」
  海里はケロッと笑顔になった。
 未来「お前なあ…だからと言って急に変わる奴があるか」
 海里「じゃあ、どうしたらいいの?未来君のために頑張って笑顔になったのに…文句あるの!」
 未来「ただ、俺はだな…。でも、その方がお前らしいぜ」
 海里「未来君、急に格好つけないでよ。わたし、何か…」
  海里の顔はだんだん赤くなっていった。未来は照れていた。
 恭平「未来、盛り上がっているところ悪いんだけど、海斗だけじゃ危ないから、俺たちも一緒に行こう」
 未来「ああ、そうだな。じゃあ、海斗、行こうか」
 海斗「はい、未来さん!」
  光から暗闇へ…。
 伊都子(ナレーション)「…というわけで、海斗君と未来君と恭平君は、一緒に万馬券を交換しに行きました。瑞希先生と海里さんは、この近くの公園に移動して、大きな木の下のベンチに二人並んで座りました」



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