一八
文字数 760文字
「季節の変わり目は革命の一種だから…」
食事を済ませて皿を洗う時に、ふと口から零れた言葉である。
その言葉は、自分の脳裏にあのことを鮮やかに思い出させた。
あの焼けつくような暑い季節のことを…。
節々に魔が出る。変わり目変わり目に人は悩み苦労する。それを季節と云った。
春から夏の境目、夏から秋の境目、秋から冬との境目境目に病気が出てくる。
今日から明日の境目にだって病気が出てくる。
私達が運命の変わり目、広宣流布の変わり目だから色々なことがある。
その色々なことがある中で、人は余裕を失い、冷静な判断ができない。
人は人と衝突し、そして人は人から離れて、やがては孤独となる。
人が孤独というものを知った時、初めて自分自身を見直すことができる。すなわち、そこには自分自身を見直すための心の旅があると云った。そこに自己の成長の根源があった。
季節は乗り越えるもの。それを乗り越えては前進する。
あれは忘れもしない桜が満開だった季節、自分の内を真っ白にしたいという同じ境涯の二人が出会った。春夏秋冬が繰り返される中、この二人の絆は深まって行った。
その二人とは、あの早坂貢と早川愛子(自分の記憶の中でも、貢は彼女のことをリンダと呼んでいた。それが彼女の本当の名前のようだ。そして彼女も昨日、リンダが本当の名前と言っていた)のことである。
二人には色々な出来事があった。…青春の光と影は、それを繰り返していった。
でも、二人はお互いに力を合わして乗り越えては前進してきた。
そして、昨日会った海里という子は、あの頃の愛子(ここでは敢えて愛子と呼ぼう)にそっくりだった。
…瞳の色、髪の色を除けば、本当に愛子に瓜二つに見えた。
また海斗という子も、貢にそっくりだった。
この二人が並ぶと、あの頃の貢と愛子を見ているようだった。