Scene5 暗闇から光へ…。場所は、屋上。海里は佇んでいた。
文字数 736文字
海里は静かに空を見上げた。
海里「パパ…どうして、わたしを置いて行っちゃったの?」
海里は静かに涙を流した。涙は光を受けてキラキラと輝いた。
海里「…パパはきっとネバーランドで朝日を見ているのね。わたしも行きたいな、ネバーランドに…。パパだけずるいよ。…ここから飛んだらピーターパンみたいに行けるのね。また一緒にあの丘から朝日を見ることができるのね」
海里は上履きを脱いで、綺麗に揃えた。そして、手紙らしきものを上履きの上に置いた。
海里「…パパ、海里は、もうすぐパパの所に行きます」
そこに海斗が走って来た。
海斗「お姉ちゃん、僕も連れて行ってよ」
海里「ごめんね、お姉ちゃん一人で行くね。あなたは来ちゃ駄目だよ」
海里は、柵をよじ登ろうとした。海斗は、海里を引き摺り下ろした。
海斗「お姉ちゃんのバカ!」
海斗は海里の左の頬を思いっきり引っ叩いた。バシーンッと音が響いた。
海里「…ちょっと、海斗、痛すぎるじゃないの!」
海里は、涙を零したまま、左の頬を押えた。本当に痛そうだ。
海斗「ご、ごめん…。でも、こんな所から飛んだら、お姉ちゃん死んじゃうよ!」
海斗は涙を零していた。
海里「お姉ちゃんは、ネバーランドに行けないのね…」
海斗「そうだよ。…二度とお姉ちゃんと会えなくなるなんて、そんなのやだよ…」
海斗は海里を抱きしめて、号泣した。
海里「…海斗、ごめんね。…ごめんなさい」
光から暗闇へ…。
伊都子(ナレーション)「海里さんは、この後、瑞希先生にもの凄く怒られました。そして、暫くの間、学校を休むことにしました。わたしは、海里さんが笑顔で帰って来る日を待っています。でも、もうすぐ夏休みですね。二学期にまた会えることを楽しみにしています。」